地方創生の10年

 鳥取県の視察先で市民と笑い交わす写真が翌日の紙面にある。〈私自身をトップとする「地方創生本部」を政府内に新設致します〉…当時の安倍晋三首相がこう表明したのは、ちょうど10年前の2014年6月14日▲本紙のデータベースで見ると「地方創生」はこの記事が初出で、昨日までの3652日間に3417本の記事が載っている。単純に計算すると、ほぼ「来る日も来る日も」の頻出ワード▲「石の上にも三年」…10年はその3倍強だ。どんなに困難な取り組みでも何かしら見るべき成果や変化が起きていてよさそうな▲政府が地方創生の10年間をまとめた報告書を発表した。冒頭には〈大きな流れを変えるには至らず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある〉と素直な反省が記されてはいるのだが▲〈人口減少や一極集中の是正は国全体で戦略的に挑戦すべき課題〉〈自然減・社会減、それぞれの要因に応じて適切な対策を…〉〈自然減対策では、個々の自治体の努力には限界が…〉と少し先まで読み進めて、思わず言いたくなった。何を今さら▲もちろん、政府の取り組みがゼロだったら地方の衰退は今より進んでいた可能性がある、という反論はあり得るだろう。それでも「十年一日」のお手本を見せられている気分が消えない。(智)

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