令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)沖縄予選 決勝 興南 vs 那覇西

初制覇を目指した興南の勢いを跳ね返し、那覇西が県インターハイ2年ぶり19回目の頂点
那覇西イレブン(写真=仲本兼進)

 令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)沖縄予選は8日、金武町フットボールセンターで決勝が行われ、那覇西が延長戦の末に4-2で興南を下し、2年ぶり19度目の頂点に立った。

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 ノーシード参戦で初優勝を目指した興南は今大会、準決勝までの5試合で40得点と攻撃力を十分に発揮。対する第2シードの那覇西は4試合1失点と盤石な試合運びを演じてきた。

 タテホコ対決は序盤から動く。12分、興南がミドルサード中央でボールを奪うと、MF大塚遙人がDFラインの背後を突いた2年生FW金城圭成へスルーパス。「奪ったあとのカウンターを狙っていた」と、金城の思惑通りの形でGKとの一対一を制し、興南が一歩リードする。

興南 vs 那覇西(写真=仲本兼進)

 その後も興南は、ボールを大事にする那覇西のパスコースを限定させ、球際強くボールを奪取しショートカウンターで相手ゴールに迫る場面も何度も作った。すると後半5分、興南はMF森吉智の左CKからニアサイドに立つMF又吉真豊が右足バックヒールで合わせ待望の追加点。初栄冠へまた一歩近づいた。

 後半残り30分で2点差とされ崖っぷちに立たされた那覇西だが、攻守で存在感を光らすMFチメズ ビクター チュクンマは「1ミリも焦りはなかったし、いつも通りにやれば絶対に勝てると思っていた」と話す。名門としての意地とメンタリティーを個々の選手が備えた那覇西はここからギアを上げ、雨で濡れたピッチの上で正確なパスコントロールとトラップで細かくボールを動かし、疲労の色が見え始めた興南のプレスを巧みに剥がして攻撃時間を増やす。そして後半10分、有言実行とばかりに左CKからビクターがヘディングシュートを決め、1点差にした。

 以降、攻撃権を明け渡さない勢いの那覇西。一方、GK新里惇樹を中心とした興南の守備も懸命に立ちはだかる。1点の攻防が展開されるなか試合終了間際の後半33分、那覇西がゲームを動かす。敵陣で相手を釘付けにし、左MF與古田頼がマイナスへ折り返すとボールはビクターのもとへ。「得意な形だったし、追いついて打てた」と、カーブをかけながら放ったミドルシュートはゴール右上へと吸い込まれ、値千金の同点弾に。土壇場で振り出しにし、試合は延長戦へ突入した。

 開始早々から攻勢の那覇西。延長前半1分、ビクターが前方へループパスを送ると、DFラインの裏を突いた2年生MF上地玲央がPA内中央から冷静に沈め、ここで形成逆転。さらに上地は延長前半8分、右CKからこぼれ球に頭でねじ込み追加点を奪いきり、勝負を決定づけた。

 「2点取ったことより、チームとして勝てたことが嬉しい」と上地。23年の新人戦優勝のあと、那覇西は総体と選手権、そして今年の新人戦も合わせて約1年間王座に君臨できなかったが、昨年から指揮する運天直樹監督は「2点リードされたあとも焦らず、積み上げてきたサッカーを貫こうとする選手たちが勇気を持ってプレーしてくれた。去年の悔しさを知る子たちのたくましさが引き寄せてくれた」と、最後まで攻守でコンパクトな距離感を保ち躍動した選手たちを称えた。2年からレギュラーのビクターも「勝てない時期も、必死に練習から信じてやり続けた成果が出て正直ホッとしています。でもここからが大事。これで満足せず切り替えてがんばります」と鉢巻を締め直し、ついに得た成功体験を大事に全国へ弾みをつける。

 一方、あと一歩のところで快挙を成し得なかった興南も近年沖縄県サッカー界で旋風を巻き起こしているチーム。サッカー誌の記者を経て指導者となった奥間翔監督が2014年当時、部員16名のチームを再編し地道に力を蓄えてきた。「心技体のみならず、知能を上げることで質を高める」(奥間監督)と、映像分析を積極的に活用し理解力とプレーイメージを高めた。そして選手との対話を重ねながら不安と不満を取り除き、向上心を維持させて目指す方向を一致させている。さらに今年初めて沖縄県リーグ(波布リーグ)1部に昇格し、強豪との連戦を積み重ね、一層のチーム力アップが期待される。

 今大会は、「やるべきことはやれたし、今まで跳ね返され続けたベスト4への壁も初めて乗り越えての決勝。ただ連戦での体力面、自陣へ押し込まれたときの守備の粘り強さ、あと相手のサイズに突かれて点差を守りきれなかった。優勝を成し遂げるにはまだまだ甘い。今回の経験で次何をすべきなのかを選手それぞれがしっかりと感じ取ってこれからに臨みたい」と、奥間監督は選手権に向けて闘争心を掻き立て、結束力を高めていきたい考えだ。

 両チームは今月15日から大分県で開催の「第76回全九州高等学校サッカー競技大会に出場。優勝した那覇西は熊本国府(熊本)と、準優勝の興南は龍谷(佐賀)と1回戦を戦う。

(文・写真=仲本兼進)

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