「シェイシェイ!」店に立ち続けて50年 幾多の困難乗り越えた名物女将

福島県内で長く愛される、老舗の今を伝える「老舗物語」。きょうは福島市の創業70年を超える町中華のお店です。店を仕切っているのはいつも元気な名物女将。新型コロナ、夫の死などの困難を乗り越えて受け継がれた味がありました。

\--お客「味がちょっと濃いめなので、ごはんが進む味で好きです。」

\--お客「子どもの時からお正月になると座敷でみんな集まって、新年会をやっていた。だからものすごく思い出がある。」

県庁前通りからほど近くの福島市北町(きたまち)の通り。このレンガ造りの建物がきょうの舞台、中華料理店の『珍満賓館』です。

店の人気は、平日限定の日替わりランチ。このボリュームでなんと680円。物価高にも負けずお客さんの財布とお腹を満たしてきました。

\--井上和樹アナウンサー「お肉が柔らかくて野菜がシャキシャキ。そして甘じょっぱい味付けでごはんが進みますね。」

愛される理由は、料理だけではありません。

\--塩野琴さん(珍満賓館)「久しぶりに来ていただいてありがとうございます。シェイシェイ。ごゆっくりなさってください。」

名物女将として親しまれる塩野琴さん、76歳。店に立ち続けて今年で50年です。

口癖は「シェイ・シェイ」。気さくな笑顔で客たちを出迎えます。

\--塩野さん「たくさんあるお店から珍満を選んでお越しくださるんだもの、うれしいじゃない。ありがたいという感謝の気持ち。またお客様にお目にかかれるという出会いがあるからうれしくなっちゃうの。」

珍満賓館の歴史は、終戦後の1947年にさかのぼります。塩野さんの父で台湾出身の王林騫(おうりんけん)さんが開業しました。父の王さんが亡くなった4年後の1974年、塩野さんは、夫の哲央(てつお)さんと共に父の店を継ぎました。

いつもにぎやかな店内ですが、一時、客足が途切れたこともありました。それは、新型コロナの感染拡大です。飲食店に営業時間の短縮要請が出され、これまで通りの営業ができなくなりました。感染が拡大していた一昨年、塩野さんは私たちに本音を話していました。

\--塩野さん(※一昨年1月撮影)「後ろを振り返れば従業員やお客さんがいらっしゃるが、それに応えることができないと。本当に商売は思い切って閉めざるを得なくなると思います。」

さらに一昨年7月、50年近く店を二人三脚で支えてきた夫の哲央さんが病気で亡くなりました。

\--塩野さん「信じられないというのがまず最初。なんとかうちの父ちゃん(哲央さん)の意志を守らないといけないと思いました。」

一時は“休業″も考えました。

しかし店の味を楽しみにする常連客の存在が心を奮い立たせました。

\--塩野さん「来てくれるお客様がいっぱいいるのだもの。お客様の笑顔見るとエネルギーいただいて、もう少し頑張ろうかなと思った。」

亡くなった哲央さんの残した味を受け継ごうと、料理人たちも塩野さんの思いに応えました。

\--山本佑太さん(珍満賓館)「(哲央さんは)ここの店の味というか、ほとんどを決めた人なので。変えないで残したいと思う。」

揚げたてのエビを使った人気メニューの『えびカレー(980円)』。哲央さんが考案した料理は、いまもその味が受け継がれています。

\--井上アナウンサー「いただきます!エビがぷりっぷりです。しかもこのルーがスパイシーで本格的ですよね。」

\--塩野さん「違いが分かる男だね!」

\--井上アナウンサー「哲央さんの味が残ってるんですか?」

\--塩野さん「完全に残ってます!あそこに行けば昔のあの味が食べられるという懐かしい味、郷愁を帯びる味。それが一番だと思う。」

しくちあふれた気持ちになる料理を広めたい』。店名に込められた父の思い、そして夫の残した味を受け継ぐため、塩野さんはきょうも店に立ち続けます。

\--塩野さん「父ちゃんの味を知らない人もいるなかで、昔の味を知っている料理人たちが一生懸命伝えている。いつも変わりなくておいしい味だねって、お客様に言ってもらえる味をみんなでしっかりと継承したい。」

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2024年6月13日放送回より)



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