没後1年、初公開の愛用品も 現代日本代表する作家、森村誠一に迫る 埼玉・熊谷で企画展 「人間の証明」も

展示について説明する大井教寛さん=12日、熊谷市桜木町の市立熊谷図書館

 現代日本の文壇を代表する作家で、熊谷市出身の森村誠一氏が、昨年7月24日に90歳で亡くなって間もなく1年を迎える。同市桜木町の市立熊谷図書館では、ミニ企画展「追悼・森村誠一の証明展」が開幕。初公開の愛用品や関連資料も数多く展示され、あらゆるジャンルで創作を続けた業績と生涯をたどる。

 企画展は3階郷土資料展示室の一部を充て、森村氏が同図書館に寄贈した品や遺族に借りた物など61点を展示。うち半数を超える34点が、初めて紹介される資料だ。

 作品関連では、代表作「人間の証明」の構想を大学ノートに記したプロットや、「ミッドウェイ」の生原稿、発行された各著作の単行本などを概観できるように並べた。同図書館副館長兼美術、郷土係長で学芸員の大井教寛さん(50)は「創作の過程が分かり、森村さんの頭の中が見えるようで興味深い。パソコンで執筆する今の作家は、完成形しか残らないことがほとんど。今後、先生の文学論が展開されるだろうが、研究の貴重な材料になる」と言う。

 愛用品では、学生時代から熱中した登山で使ったピッケルや登山靴のほか、取材道具のカメラ、カセットレコーダーなどを集めた。大井さんは「徹底して綿密な取材をする人だったので、愛用した物を通して人間・森村誠一を実感してほしい」と話す。

 戦後60年の頃に初めて会って以来、大井さんは森村氏に講演を依頼するなど、20年近くにわたって交流してきた。「どんな話も真剣に聞いてくれたが、眼光が鋭く、全てを見透かされるようだった。推理小説でも従来の作家はトリックの謎解きに終始しがちだったけれど、人間の情感や背景をきちんと描いてきた先生らしい」と回想。「この企画展で作品に対する情熱や、妥協しない姿勢を感じ取ってもらえたら」と願った。

 9月8日まで開催。祝日を除く月曜と7月5、16日、8月2、13日、9月6日休館。開館時間は午前9時~午後5時まで。入場無料。問い合わせは、同図書館(電話048.525.9463)へ。

愛用品の大部分は初公開された貴重な資料

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