松山英樹は朝スタートの2日目がカギ ローリー・マキロイ盤石のワケ【タケ小山の目】

松山英樹の浮上は? マキロイとシェフラーの対決も注目(撮影:GettyImages)

<全米オープン 初日◇13日◇パインハースト・リゾートNo.2(米ノースカロライナ州)◇7548ヤード・パー70>

海外メジャー第3戦「全米オープン」は初日の競技が終了した。大会を主催する全米ゴルフ協会(USGA)のお膝元で開催されている今大会。過酷なパインハーストNo.2での戦いは初日から“苦しい”場面が続出した。このあとの世界一決定戦はどのような展開となるのか。大会を中継するBS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)で解説を務めたタケ小山に展望を聞いた。

■これぞ全米オープン!

小山氏の第一声は「全米オープンらしい展開になりましたね」。“サディスティック”というのがまさにパインハーストを形容するにピッタリの言葉だ。全米オープンといえば、米国の由緒ある名門・難コースで開催されてきた歴史ある大会。今回で124回を数えるが、まさにそんな過酷さが初日から垣間見えたと小山氏は“ワクワク感”を覚えたという。

「きょうのトップは5アンダーですが、これが優勝スコアになる可能性もありますね。初日のアンダーパーが15人。ここからどれだけ減っていくかの勝負でしょう」。ふるい落とされていくトッププレーヤーたちが、歯を食いしばり、コースと対峙する姿が残り3日間も見られそうだ。

その過酷さはどこにあるのか。「やはりグリーンとグリーン周りに難しさがあります」と改めてパインハーストの難解さを説明してくれる。「ナイスショットだと思われたボールが、グリーンからこぼれていく」といったシーンがいきなり量産された。「そこからどうイマジネーションを働かせていくか」。傾斜が強い亀の甲羅のようなグリーンと、外した際のアプローチの引き出しが試されているという。

「このあと散水しなければ、どんどんグリーンも硬くなっていきますね。そうなってくると、どんどんスコアは落ちていくでしょう」。まさにサバイバルが繰り広げられる可能性は高い。「あとは3~5メートルのパーパットをいかに沈めるか。バーディ合戦ではなく“パーパット大会”になってきます」。

かつてはイーブンパー前後が優勝スコアに設定されていた。「コンサバ(保守的)なUSオープンになるんじゃないでしょうか。そういうのもいい。一人だけアンダーパーとかの展開を見てみたいですよね。硬くなればフェアウェイも転がっていく。最近見たことのないコースシェイプになる。そうなってくると、やはりうまい選手とゴルフ脳が高い選手が上に来ますね」。

■松山英樹浮上のカギは?

初日を2オーバーとした松山英樹。やや出遅れたが、松山について1点だけ指摘する。「パッティング」だ。最終ホールではバーディトライがカップをかすめて1メートル弱オーバーさせたが、返しを決めきれずにボギー。「打つ前になにか気にしていたのはありますが、見ているとボールのラインが揺れていましたよね」。初日は3パットが2回。スタッツを見ると、パッティング部門での数字は下位に甘んじている。

微妙な傾斜と速さに苦しむ一日となった松山。それでも「1回ミスはありましたけど、バンカーからチップインバーディもありましたし、そこはやはり松山選手」と、グリーン周りの想像力はやはりトップクラス。この日はフェアウェイキープもパーオンにも苦しんだが、まだまだ挽回可能な位置にいるのは間違いない。

「修正してくるでしょう。あした終わればトップ10には入っているでしょうし、決勝ラウンドでも上位に来ると思います。ここからが松山選手の強さです」

10年前に同地で開催された大会では初日のアンダーパーが15人で今回と同じ。そして当時は最終的に3人にまで“削られた”。「ガマンしていけば、まだまだ松山選手にもチャンスはある。初日は午後スタートでしたが、2日目は朝のスタート。ちょっとしっとりしている朝のグリーンでスコアを伸ばすでしょう」と、日本のエースの奮起を期待する。

■マキロイ&シェフラーの戦い

「松山選手も上位には入ってくると思いますが、この日の5アンダーというのは、ほかの選手にとってはとんでもないハンデです」と語るのがローリー・マキロイ(北アイルランド)の飛び出しだ。5アンダーで首位に立ったマキロイは、昨年まで5年連続で本大会トップ10入り。その昨年は2位にも入り、世界一過酷な大会の戦い方を知っている。そのマキロイが飛び出したとあれば、追いつくのは難しいと小山氏は見る。

マキロイはホールアウト後に「子どもの頃プレーしていたリンクスのようなコースだ」とこの舞台を歓迎。ボギーフリーの5バーディと圧巻の内容だった。完ぺきなゴルフは、10年ぶりのメジャー制覇に向けて大きなアドバンテージに違いない。

「リンクスコースに慣れている欧州やオーストラリアの選手は、グリーンの外から転がすというのがうまい。ほかの選手は練習ラウンドでは試すけど、本番ではなかなかできないのが現実。(ザンダー・)シャウフェレもやっていましたけど、あんまり寄っていませんでした」と分析。なおさらマキロイの快進撃が進んでもおかしくない。「ここで勝てば、マキロイの新時代が来るのではないでしょうか」と、メジャー5勝目の可能性は高いと見る。

さらに気になるのは世界ランキング1位、スコッティ・シェフラー(米国)の存在だ。初日は順位で見れば34位だが、1オーバーは決して出遅れではない。ここからのサバイバルを思えば、十分に射程圏内だ。

「珍しく右に左に曲げていましたけど、最低限耐えていましたね。あとは、運もすごくありました。ネイティブエリアに行ってもグリーンが狙えるライにあった。大叩きしている人はそういう運がなかった。ここからシェフラーも上がってきます」。この日のシェフラーはフェアウェイヒットがわずか6ホール。名物のネイティブエリア(砂地にワイヤーグラス)から打つシーンが目立ったが、幸運にも前方に打てる場所に止まっていた。

「あれだけ暴れて1オーバー。それが世界の上位陣の力です。でも、結局はフェアウェイにいないと勝負にならないコース。最後は修正もしていましたし、ここから上がってくるでしょうね」。全米プロでは騒動に巻き込まれ優勝を逃したが、今季はすでに「マスターズ」を含む5勝と無双状態。イーブンパーにつける世界ランキング2位、「全米プロ」覇者のシャウフェレ、同3位のマキロイが同組の予選ラウンド。2日目も展開されるビッグ3の激突は見物だ。

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