和平プロセス前進目指すウクライナ平和サミット、スイスで明日開幕

(Keystone / Urs Flueeler)

ウクライナ戦争の平和的終結に向けた世界的な合意を見出すという、スイス外交にとって史上最も困難かつ重要な試練の舞台が整った。

スイス中部のリゾート地ビュルゲンシュトックで15、16両日に開かれるウクライナ平和サミットには、首脳を含む90カ国・国際機関の代表者が出席する。

スイスが主催する平和サミットは、今週末で戦争を終結させることを提案しているわけではない。戦争終結させるための多段階にわたる国際的な努力の土台作りが目的だ。

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スイス連邦政府は10日、「サミットの包括的な目的は将来の和平プロセスを鼓舞することだ」と発表した。

スイス・欧州連合(EU)間のスイス側の元首席交渉官ミヒャエル・アンビュール氏は、今回のサミットの意図を称賛する。 同氏は独語圏日刊紙NZZに「スイスは国際的な仲介役を果たせることを示す機会を得た」と語った。「我が国の外交によって、スイスがこのプロセスで望んでいる姿を世界に示せる」

同時に、サミットが具体的な成果を上げられないリスクもある。スイスのイグナツィオ・カシス外相は、この先に待ち受ける課題を「山登り」に例えた。

カシス氏は10日の記者会見で「平和に関するサミットほど不確実なものはない。特に当該国の間で軍事衝突が続いている場合はそうだ」と語った。

分科会で議論

サミットでは地政学的に利害の異なる複数の国々に対し、ロシアとウクライナ間で和平ラインはどのような形が望ましいのか、最初の見解を示すよう求められる。さらに困難なのは、この難しいテーマについて、各国が納得する共通の土台を見つけなければならないことだ。

誰が出席し何を話し合えるのか、という駆け引きでさえ政治的に非常にデリケートだ。このため刻々と変化する出席者リストと議題は直前に公表される。

スイスはこの議題を小さく分割することを決めた。議題はウクライナが提示した10項目の和平案のうち、紛争地域の原子力発電所の安全保障、ウクライナの穀物輸出の維持(食糧安全保障)、捕虜・拉致された子どもたちの開放(人道的被害)に絞られる。

これらが選ばれたのは、すでに一部の国から独自に提起されていたからだとカシス氏は説明する。「もし私たちが(これらの点について)解決策を見つけることができれば、この小さな一歩が、私たちに第二の一歩を踏み出す自信を与えてくれるだろう」

独語圏日刊紙ターゲス・アンツァイガーによると、これらの議題は、1地域が議論を独占することのないよう、複数の国の共同リーダーシップのもと分科会で話し合われる予定だ。

閉会時に共同合意宣言を出すことができれば、サミットの成功と言えるだろう。

ロシアの欠席

平和サミットが包括的な和平案を提案できない理由はもう1つある。ウクライナが出席する一方、ロシアが招待されていないことだ。

ジュネーブ安全保障政策センターのトーマス・グレミンガー所長は、スイスの通信社Keystone-ATSに「この会議が対ロシア同盟とみなされないことが重要だ」と語った。

「もしサミットが双方の立場を考慮しなければ、スイスは偏ったプロセスを開始したと非難されかねない」と言う。

ロシア政府はサミット開催が発表された瞬間から、無意味なものだと非難している。

カシス氏は、スイスは無条件にロシアに招待状を送ることもできたが、ウクライナの辞退を恐れたと話す。「私たちはリスクを天秤にかけ、それに基づいて決断を下す必要があった」

この決断の影響は、サミットの出席者リストにも表れている。招待された160カ国・機関のうち、承諾したのは90カ国・機関だけ。中国とサウジアラビアはロシアが除外されているとして関心を示さなかった。

ブラジルと南アフリカも難色を示し、首脳や高官の派遣を拒否した。

今後は?

第2、第3の平和サミットが今後行われるかはまだ分からない。ターゲス・アンツァイガーは次の開催地としてサウジアラビア、カタール、トルコとの話し合いがすでに進行中だと報じている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今週初め、開催候補地の1つであるサウジアラビアを訪問し、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談した。

ロシアはどこかの段階で和平プロセスに参加する必要がある、とカシス氏は言う。「ロシアが参加するかどうかではない。いつ参加するかだ」

しかし、ロシア政府は中国など別の国が主催する交渉のテーブルにつくことを選ぶ可能性がある。

カシス氏は「中国は並行して和平交渉を進める意向を示している。全員が一堂に会することが不可能であれば、並行したプロセスが必要ではないかという指摘もある」と述べ、スイスは平和をもたらすための別の努力を歓迎するとした。

編集:Balz Rigendinger、英語からの翻訳:宇田薫、校正:上原亜紀子

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