【日本ハム】新庄監督 チーム好調なのに投手コーチ配置転換…垣間見える今季への「本気度」

一発を放った水谷(左)を迎える日本ハム・新庄監督

勝負どころで〝攻めのシフト〟に転じたということか。日本ハム・新庄剛志監督(52)が12日の中日戦(エスコン)から投手コーチの配置転換を行ったことが注目されている。

これまでベンチを担当していた建山義紀投手コーチ(48)がブルペン担当に配置換え。ブルペン担当だった武田久投手コーチ(45)が同日からベンチ入りした。球界で「配置転換」と言えば、一般的には低迷するチームの「テコ入れ策」。どちらかというとマイナスの印象だが、今回の配置転換に関してはプラスの意味合いが強い。

実際に新庄監督も「(これまでブルペン担当だった武田コーチに)僕の考えを隣にいさせて。こういう場面は打者はこうだよとかを聞かせるために」と説明している。その上で「一時、武田君に隣にいてもらって次は加藤君(加藤武治投手コーチ)に隣にいてもらってね。僕のやりたい野球っていうところを伝える」とも続け、今後も投手コーチの役回りを順次入れ替える考えを明かした。

とはいえ、チームは14日現在で首位ソフトバンクとは8ゲーム差となっているものの、貯金は6で依然としてリーグ2位。チーム防御率もリーグ3位の2・74とリーグ平均(2・95)を下回る。そんな状況下で、なぜこの時期にあえて配置転換を試みたのか。この動きから垣間見えるのが、新庄監督の今季にかける「本気度」だろう。

新庄監督は現役時代に野手として活躍。打撃や守備、走塁に関しては一流の極意を持つ反面、投手の調整やコンディション作り、起用法に関しては投手出身のコーチほど熟知していない。そのため、ここまでは建山コーチに投手全般の把握や起用法等を委任。役割分担を心掛けてきた。

だが、基本的に投手コーチは選手側に立ち、極力投手陣に無理をさせないよう配慮を試みる傾向にある。限られた戦力で長いシーズンを乗り切るためには当然のことだが、試合の勝敗責任を担う指揮官からすれば、多少無理をしてでも特定の投手を起用したい場面はある。

この両者間の「溝」を埋めておかなければ、必ずシーズンの勝負どころでチーム内に混乱が生じる。その時に備え、新庄監督はシーズン中盤に差し掛かることからも、この時期の配置転換で自身の考え方や起用法を各投手コーチに周知徹底しておく必要があったはずだ。

周知の通り、新庄監督は昨オフの続投会見でチームが今年Aクラス入り(リーグ3位)できなければ「ユニホームを脱ぐ覚悟がある」と宣言。退路を断った上で今季に臨んでいる。選手の成長に尽力した過去2年とは違い、今年は勝負の年。そのためには選手の状態を気にしつつも勝利を追求しなければならない。

「結局は(試合に)勝たないといけないですから。例えば火曜日だから、ちょっと先のことを考えて(救援投手を投げさせない)とか、そういう気持ちでは俺はやりたくない。今日の試合を勝って後から考えるタイプなんで。攻めたいタイプ。(各投手コーチとは)その辺を考えながらやっていきます」(新庄監督)

14日の巨人戦(エスコン)でチームは2―7で敗れ、連勝が2で止まった。それでも難しいかじ取りを強いられながら、終始前向きな姿勢を貫く指揮官のこと。今回の〝事前対処〟は、間違いなく今後の戦いにプラスに働くはずだ。

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