【コラム・天風録】影の主役たち

 ロシアのプーチン大統領は、先進国G7の首脳たちと仲良くしていた時期があった。同じテーブルに着いて、G8と呼ばれていた。ところが、ウクライナ南部のクリミア半島編入を強行し、たもとを分かった▲あおりで10年前、ロシアで予定されていたG8首脳会議(サミット)が流れてしまう。さらに、ウクライナ侵攻で文字通りの敵役となった。イタリアで開催中のG7サミットでは不在にもかかわらず、「影の主役」のような存在感を醸し出している▲「プーチンの横暴を許してはならない」とG7は結束。ロシアの凍結資産を活用し、多額の補助をウクライナに提供して、10年先まで安全を保障するという。支援疲れが指摘される中、そんな破格の援護策を急いで決めたのは、もう一人の「影の主役」も意識しているからだろう▲秋の米大統領選で返り咲きを目指すトランプ氏である。国際公約であっても気に食わなければ平気でほごにしてきた。ウクライナ支援もG7の結束も、先行き安泰だとはいえそうにない▲選挙を控える政権は米国だけではない。支持率低迷で足元のおぼつかぬ首脳も多い。影の主役たちが問うているのは、G7の存在意義かもしれない。

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