金髪にロン毛!ホストから “漁師”へ…中学時代は “不登校” 型にはまらない “若き船頭” 富山・氷見市

誇りある地元の海を盛り上げたい。氷見の小さな漁港で挑戦を続ける若手漁師がいます。ホストから漁師に…。異色の経歴をもつ男性は、型にはまらない生き方で漁船の上で日々奮闘を続けています。

トレードマークは「金髪ロン毛」。船上でそのロン毛を振り乱し走り回っていたかと思えば…。

ノースリーブ一枚で一つ20キロの魚の餌を軽々と運ぶ屈強な姿。プロレスラーのようなその風貌とは裏腹にひとたび、口を開くと…。

「いきます。ちなみになんかリポーターさんの竹内さんが餌まかれたりしますか?それはしないですか?別に誰やってもいいんですけど」

実は、気配りの人…。

型にとらわれない自由なスタイルで新しい漁師像を作り上げるその人こそ、氷見市宇波浦漁協所属、曽場慎太郎(そば・しんたろう)さん25歳。

記者:「帽子についているのは…?」

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「これはサバです」「インスタで広告が流れてきて怪しいやつだったんですけど、2000円ぐらいだからいいやって、これ使わないでください…」

ノースリーブ一枚がお決まりのスタイル

元日の能登半島地震から1か月あまり。船上では極寒の2月にもかかわらず、ノースリーブ一枚。

記者:「寒くないですか?」

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「いつもこの格好です、服汚れちゃうので」

よく見ると二の腕には鳥肌が…。

沖合からおよそ1キロ離れた海に設置した定置網で狙うのはブリやフクラギ。大漁を期待し、網を引きあげると。

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「あっち泳いでった、今度こっち来たやんか」

網にかかっていたのは大量のイワシ。

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「網に捕らえられたイワシが逆方向に泳いでいっちゃうみたいな感じで、網がもう持ちあがらない」

イワシの大群が定置網の中で暴れまわり網があがりません。

格闘すること1時間。船に乗り切らないほどの大漁のイワシがかかっていました。この日の水揚げは6.8トン。そのほとんどがイワシでした。

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「獲りきれる量ではない。終わりが見えない量。これが毎日続くとちょっと大変ですね。不漁よりはいいんですけど…」

風貌とは裏腹の気配り 夜の街で学んだのは…

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「なんかあったら電話してもらって」「ありがとうございます」

この細やかな気配りのできるルーツはこんなところに…。

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「宣材写真なんですけど、これとかですかね」

記者:「なんという名前で?」

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「普通に本名使っていました。これあとから送るので別画面で使ってください」

21歳のときホストクラブで働くのにあわせて金髪に染めました。

中学は不登校、高校は中退。

初めての煌びやかな夜の世界で学んだのは人の心をつかむ気づかいとやさしさでした。

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「人間関係は広がっていくので、結局、今の自分の立場、船長となると人を統率しないとダメ」

その後も仕事を転々として22歳のとき再び故郷の海に戻ってきました。

地元の水産業に活気を…任されたのは

そして、高齢化や漁獲量の減少など深刻な問題が山積する中、所属している組合から託されたのがギンザケの養殖です。

「養殖ギンザケ」は国内サーモン人気の高まりを受けて需要が高く、近年、高値が付くことから新たな試みとして3年前に組合がはじめました。

その生育責任者に抜擢され、早朝の定置網漁が終わってから毎日欠かさず、漁港から1キロ離れたいけすに足を運び自らの手でエサをあげています。

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「給餌機がついているのですけど、(エサを)食べれる魚と食べれない魚が出てきちゃうと魚もかわいそうだなと思って」

石川県境にある宇波漁港。25年ほど前にはブリなどで年間1億近くの水揚げを誇りましたが、高齢化による担い手不足などを背景に漁獲量は年々減り続け、去年はピーク時の4割ほどに留まっています。宇波浦漁協組合の新たな挑戦として始まったギンザケの養殖。

5月、いけすの中で40センチほどまでに育ったギンザケが水揚げの時期を迎えました。毎日、欠かさずエサやりをしたかいあってことしは…

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「重さがことしはよかったです。こんな感じで丸みを帯びてて」

今シーズンは先月15日から15日間の漁で水揚げが量は減りましたが、大きく、脂ののりがよい上々のギンザケに育ったということです。

宇波浦漁業組合代表理事組合長 荻野洋一さん:「みんなでかわいがってというか、みんなで盛り立てて、船頭として育っていってほしいなっていうか、期待しています」

宇波漁港 漁師 曽場慎太郎さん:「天然の魚をとるだけじゃちょっと環境にもよくないですし、自分たちで育てて食べるっていうことも、将来的にはしていかないとだめかなと。手探りですけど、ちょっとずつ将来的にも持続可能な水産業にしていけたらと思って…」

ブリの街氷見の新たなブランドとして確立し、地元の海を盛り上げることができるのか。トレードマークの金髪ロン毛をなびかせて曽場さんはきょうも海に出ます。

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