「降雨の客観的事実なし」と結論 長崎の被爆地域外の体験記調査 厚労省が結果を公表

 国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」の救済を巡り、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館(長崎市)で実施した被爆体験記調査について、厚生労働省は14日までに、調査結果を公表した。被爆地域外の体験記3744件のうち、雨に関する記述が41件、飛散物に関する記述が159件あったが「記述の有無で降雨などを客観的事実として捉えることはできなかった」と結論づけた。
 調査は、被爆地域外の降雨記録が含まれている可能性があるとして県市が要望。対象は同館所蔵の約13万件。昨年7月に着手し、2月に読み込みを終え、内容を精査、分析していた。
 同省によると、調査結果は11日に県市へ送付し、同省ホームページで公表。統計学、放射線健康管理学などの専門家3人に意見を求め「体験記は思いを記述したもので、降雨などを明らかにするデータとして信頼性に乏しい」「天候そのものに関する記述が網羅されておらず、調査として不十分」などの意見が出たとした。
 同じく県市が要望している米原爆傷害調査委員会(ABCC)が実施した残留放射線などの研究結果の分析について、県市は5月末、米国のテキサス医療センター図書館と英国の公文書館を調査範囲に拡大するよう要望。同センター図書館にはABCCの資料が保管されており、公文書館は英国陸軍がABCCと調査をしている写真があることを根拠にして対象に加えた。厚労省の担当者は「体制が整い次第取りかかる」としている。

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