猫が激しく『頭を振っている』ときの原因5つ なかには要注意な病気が隠れていることも

1.外耳炎

猫の頭を振る行動が続くとき、最初に疑われるのは耳の病気です。その中でも、比較的起こりやすいのが外耳炎です。

外耳とは、一般的に耳と呼ばれる「耳介」の部分と、耳の穴から鼓膜までの「外耳道」のことをいい、この部分で炎症が起きていることを外耳炎といいます。

猫が外耳炎になると耳の中が痛がゆくなりその不快感から頭を振ったり、後ろ足で耳をかいたりする行動が見られます。耳の中には黒~茶色の耳垢がつき、異臭や耳だれが出ることもあります。

原因は、異物の混入やアレルギー、後述する耳ダニなどの寄生虫感染です。まれに腫瘤などが原因で起こることもあります。また、耳などが濡れて湿った状態が続くことで、細菌や真菌感染を起こすこともあります。

治療は原因によって、抗生物質や駆虫薬が使われます。軽度なうちに治療をはじめれば、短期間で改善しますが、放置すると症状が悪化して、手術が必要になるケースもあります。

2.耳ヒゼンダニ症(耳疥癬)

耳ヒゼンダニ症は、特に外に出る猫がかかりやすい感染症で、ミミダニや耳疥癬などと呼ばれます。

耳の中に寄生するミミヒゼンダニという小さなダニが原因で、サイズは約0.3mmと非常に小さいため顕微鏡でないとわかりません。

感染すると、耳の皮膚を刺して吸血するので、猫は激しいかゆみや痛みに襲われます。耳の中に見られるベッタリとした黒い耳垢は特徴的でダニの死骸やフンが耳垢と混ざったものです。

また、耳をかきすぎると、耳介に血液が溜まる耳血腫になる可能性もあります。

耳ダニの治療は、病院で処方される専用の駆虫薬を使って、ミミダニを駆除します。ほかの猫に感染する危険があるため、多頭飼いの家庭では隔離飼育が必要です。

適切に治療を受ければ、比較的短期間で症状は改善されますので、耳垢やかきむしりも見逃さないようにしましょう。

3.中耳炎

中耳とは、耳の穴の奥にある鼓膜とその先にある鼓室という空間のことを指します。

中耳炎は、外耳炎の炎症が波及するほか、細菌や真菌感染、ポリープ・腫瘍、異物の侵入などが原因でおこります。

中耳炎になると、猫は強い痛みを感じるのが特徴で、痛みを避けようと頭を激しく振ったり、頭を傾けてグルグル回転しながら歩いたりすることがあります。

治療は原因に応じて行われます。薬を使った内科的治療では、細菌や真菌などであれば抗生物質や抗真菌薬、あまりに痛みがあるときには鎮痛剤を投与されることもあります。

状態が悪い場合には、硬性鏡といって耳の中をのぞけるスコープを使いながら洗浄する処置がとられることもあります。全身麻酔が必要となるため、高齢猫や腎臓病などほかに疾患のある猫は麻酔が可能かどうかの検査も行われます。

4.特発性前庭障害

前庭とは、内耳と呼ばれる耳の奥の部分にあり、身体のバランス感覚を司っている器官のことです。

前庭器官になにかのきっかけで異常が生じると頭を振る、ふらつき、眼振、吐き気・嘔吐などが起こります。私たち人間が車酔いを起こすときにも、この前庭器官が関係しています。

猫の前庭障害は、中耳炎や内耳炎が原因となることがありますが、特に耳や神経に問題がない場合は、特発性(原因不明)前庭障害と呼ばれます。

特発性前庭障害は、発症から3週間から1ヵ月程度で自然に症状が消えることが多く、根本的な治療がありません。

吐き気には制吐剤や水分や栄養補給のための点滴など、症状を和らげるための処置が行われ、基本的には自宅で経過観察となります。

5.脳腫瘍・脳炎

猫が激しく頭を振る原因のなかには、脳炎や脳腫瘍などの重い病気の可能性もあります。これらは命の危険がある深刻な病気のため、初期症状に気づいた場合はすみやかな受診が不可欠です。

脳炎の原因は、ウイルス感染や免疫異常、外傷などがあり、なかでも多くみられるのは、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)による脳炎です。

一方、脳腫瘍の原因は、遺伝や環境要因、加齢などが原因とされています。

病気の原因は異なりますが、共通する主な症状は、頭を激しく振る、歩行異常、運動失調、けいれん発作、意識障害など、いずれも神経症状がみられます。

これらの疾患は早期発見と適切な治療で予後が変わるため、異常がみられたときには迷わず動物病院へ連れて行くようにしましょう。

まとめ

今回は、危険な病気の可能性もある「猫が激しく頭を振る」ときの原因を解説しました。

猫が頭を振る原因は、おもに耳や脳などの疾患と関係しています。耳のかゆみや違和感が原因で頭を振ることがあります。

外耳炎などは外から見ても異常がわかりますが、脳の疾患がもとで神経症状がみられるときには、かなり注意が必要です。

神経症状の初期に気付くには、普段からの観察が大切です。そして、おかしいなと感じたら、すみやかに獣医師に相談するようにしましょう。

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