ギャップが怖い! 北川景子に土屋太鳳も…実写化作品で“二面性のあるキャラ”を見事に演じた人気女優

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漫画に登場する美しく可愛いキャラたち。なかにはその可愛さの裏に別の顔を隠し持つ者もいる。二面性はそのキャラの魅力であると同時に、その表と裏のギャップに私たちは驚かされるのだ。また、その作品が実写化されるとなれば、その二面性のあるキャラを俳優たちがどう演じてくれるのかが、作品の大きな見どころの一つとなるだろう。

そこで今回は、実写化作品で二面性のあるキャラを見事に演じた人気女優たちを紹介する。

■優しく子どもたちを育てる孤児院の“ママ”…その裏の顔は…『約束のネバーランド』北川景子

2020年公開の『約束のネバーランド』では、北川景子さんが優しさの裏に恐ろしい顔を持つ孤児院の“ママ”役を演じていた。

略称『約ネバ』は、原作・白井カイウさん、作画・出水ぽすかさんによる大人気漫画。孤児院グレイス=フィールドハウスを舞台に、食用として飼育される孤児院の子どもたちの命がけの脱出を描いた異色のサスペンス作品だ。

北川さんが演じるイザベラは、母親代わりとなり子どもたちを優しく育てる孤児院の“ママ”。しかし、その裏では鬼の手下として、献上品となる子どもたちを徹底管理する“飼育監”という真の顔を持っていた。

作中では、浜辺美波さん演じるエマをはじめ天才児たちと頭脳戦・心理戦を繰り広げていくイザベラ。時には、渡辺直美さん演じる部下のクローネを冷たく切り捨てたり、エマの足を躊躇なく折ったりと冷徹な姿を見せる。

当時のインタビューにて北川さんは漫画原作の作品を映像化することに難しさを感じていたと明かしており、イザベラの年齢設定やキャラなど原作の設定を一つも変えないという確約のもとで、この役を引き受けたそう。原作に対する彼女のリスペクトが感じられるエピソードだ。

また、共演した渡辺さんは、“裏では凄く優しいのに、本番では激怖だった”、“普通に震えた”と、撮影を振り返り、北川さんのその二面性の演技に恐怖したことを語っていた。

共演者をも恐怖させてしまう圧巻の演技力。普段の美しく温和で優しそうな雰囲気とのギャップも相まって、見事にキャラクターを再現してみせた素晴らしい女優だろう。

■顔を交換する対照的な二人の女性『累 -かさね-』土屋太鳳

松浦だるまさんのサスペンスホラー漫画『累 -かさね-』は、その人気から2018年に実写映画が公開された。本作において、美しい若手女優・丹沢ニナと、自身の顔に劣等感を持つ淵累という異なる二人の女性を見事に演じ分けていたのが土屋太鳳さんだ。

人が羨むほどの美貌を持つものの、演技力がまったくない若手女優のニナ。口づけをした相手と顔を入れ替えることができる不思議な口紅を使い、演技の才能のある累に顔を貸して利用することで、人気女優としての地位を築こうとしていた。しかしやがて、顔ごと自分の人生を奪われつつあることに気づき、恐怖し始める。

このようにまったく違うニナと累を、土屋さんは見事に演じ切っていた。とくにクライマックス、舞台『サロメ』に立つ彼女の演技は圧巻だ。

また、本作のダブル主演となった芳根京子さんの演技も素晴らしい。作中、たびたび顔が入れ替わるニナと累は一見混乱しそうだが、二人の表情や仕草の演技により明らかに区別されていたのが印象的だった。

■黒髪の美少女だが中身は生粋のギャンブラー『賭ケグルイ』浜辺美波

前述した『約束のネバーランド』では、最後まで希望を捨てない健気な少女・エマを演じた浜辺さんだが、『賭ケグルイ』では一転、ギャンブラーの蛇喰夢子を演じている。

原作:河本ほむらさん、作画:尚村透さんによる本作は、2018年にテレビドラマ化、シーズン1、2と放送され、『映画 賭ケグルイ』『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』さらには前日譚となる『賭ケグルイ双』なども作られた人気シリーズである。

生徒同士のギャンブル勝負を推奨し、それによって決まる階級制度によって厳しく管理させる名門校・私立百花王学園。そこに、浜辺さん演じる黒髪ロングの美少女・夢子が転校してくることで物語が始まる。

夢子は、普段はおっとりとした喋り方でおしとやかな振る舞いをしているが、その本性は生粋のギャンブラー・“賭ケグルイ”であった。作中では森川葵さん、松村沙友理さん、池田エライザさんなど豪華俳優が演じる生徒たちと、騙しありハッタリあり、大金とプライドをかけたギャンブル勝負が繰り広げられる。

大勢のギャンブル中毒の生徒たちのなかでも、浜辺さん演じる夢子は一際異彩を放っていた。浜辺さん自身、夢子を演じるにあたって「限界を超えたくらいの強さで個性を出していきたい」と語っていたが、極限のギャンブルの快感に恍惚とする姿は美しく、その妖しい魅力に取り憑かれた視聴者は多いだろう。

■壮絶な復讐劇を繰り広げる少女『ミスミソウ』山田杏奈

2018年に公開された実写化映画『ミスミソウ』では、山田杏奈さんが、二面性のある主人公・野咲春花を演じた。

山田さんの初の映画主演作品でもある本作は、押切蓮介さんの人気のサイコホラー漫画が原作だ。舞台は過疎化が進むある地方の町。家族思いの優しい中学三年生・春花は、クラスメイトの陰湿ないじめに耐え、家族の前では気丈にふるまっていた。しかし、いじめがエスカレートするとその家族までもが標的になってしまい、家まで押しかけてきたクラスメイトたちは家に火を放ち、春花の家族を焼き殺してしまうのだ。そして、ここからは春花の壮絶な復讐劇が繰り広げられていく。

春花の復讐は容赦なく、ナイフやボウガンなど武器に血しぶきが飛ぶ凄惨なシーンの連続だ。それまで散々酷いことをしてきて当然の報いを受けるクラスメイトなのだが、それでもだんだん気の毒に思えてくるほどの描写もある。

山田さんは2011年に誌面モデルとなり、2013年から女優として活躍してきた。普段の柔和な表情とは違い、本作では怒りや悲しみ、絶望……と、さまざまな感情を感じさせる表情の演技が素晴らしかった。

当時のインタビューにて、“押切先生の漫画のキャラクターには目に特徴があるので、瞬きをあまりしないようにして気持ちを無にして撮影に臨んだ”と、明かしていた山田さん。思わず目を背けたくなってしまうほど残酷なシーンもあるが、全体を通して悲しさや儚さを感じられる作品となっていたのは、彼女の女優としての力量があってこそだろう。

今回は、実写化作品で二面性のあるキャラを見事に演じた人気美人女優たちを紹介してきた。いずれも普段は美しく可愛らしい面々だが、作中では、その美貌と見事な演技力で原作漫画の恐怖のキャラをさらに魅力的なものにしていた。

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