御巣鷹(群馬・上野村)で安全守る決意 鉄道・道路設備の日本リーテック(東京)が研修

風車を見つめる社員ら

 鉄道や道路などの設備工事を手がける日本リーテック(東京、江草茂社長)の新入社員33人が14日、1985年の日航ジャンボ機墜落事故の現場となった群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」での研修に臨んだ。墓標に手を合わせ、公共交通の事故の重大さや悲惨さを胸に刻み、安全を守る決意を新たにした。同社は毎年、同尾根で新入社員の研修を実施し、登山道に飾る風車の一部を寄付している。

 一行は頂上付近の「昇魂之碑」の前で黙とうをした後、墓標が広がる急峻(きゅうしゅん)な尾根を回り、各墓標に向かって手を合わせた。尾根に初めて訪れた塩見大輔さん(23)は「墓標を見て、事故で突然幸せな人生が奪われたんだと実感した。命を預かる身として『明日はわが身』と肝に銘じ、安全第一で業務に取り組みたい」と力を込めた。

 尾根での研修は江草社長が鉄道本部長だった2014年に始めた。同社は鉄道や道路の信号機、電気通信設備、道路標識といったインフラを支える事業を担い、業務には感電などの危険を伴う作業もある。日航機事故について知ることで、社員の安全への意識を高めることが狙い。

 当初は鉄道本部配属の新入社員と希望者だけだったが、16年から配属先が決まる前の新入社員全員に対象を拡大。同社総合研修センターの担当者は「安全優先は空も陸も同じ。いつか現場を指揮する新入社員に、安全の大切さを学んでおいてほしい」と話した。

 17年の研修中、参加した社員が尾根に飾られた風車に気付き、事故の風化を防ぐ力になりたいと18年から寄付を始めた。寄付した風車は累計250本以上に上り、風を受けて回る風車が犠牲者の魂を慰めている。

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