消防学校で“ドッキリ”訓練? 事前予告なし、重さ50kgの荷物を運ぶ30km行軍 訓練生たちは乗り越えられるのか?

この春、鳥取県消防学校に入校した25人の消防士の卵たちは、一人前をめざし、厳しい訓練の日々を送っています。
先日実施されたのは、いつ起こるか分からない災害を想定した訓練…しかし、実はこれ、ただの訓練ではなく、訓練生には事前予告一切なしの「ドッキリ訓練」だったんです。
入校から1か月で課せられた大きな試練、訓練生たちは無事全員で任務を遂行することができたのでしょうか。

この春、鳥取県消防学校に入校した25人の若者たち。
5月9日、彼らはいつも通り朝礼のため教室に集まりました。

和気あいあいとした雰囲気でテストの返却が行われている時のこと。突如、教室に校内放送が響きました。

「鳥取県西部地区にて大地震発生。初任総合教育第9期の学生は災害対応の指示があったため、アポロキャップ、活動着を着て、屋内訓練場に2列横隊で集合すること」

一斉に立ち上がる訓練生。
戸惑いながらも急いで活動着に着替え、指示通り屋内訓練場に集合しました。

「ただいまから震災対応訓練を実施します。使用資機材、搬送資機材はこのホワイトボードの内容。これを8時55分までに準備して、正面玄関前に2列横隊で集合」

そう、これはいつ何時起こるか分からない災害を想定した「震災対応訓練」。
実は、訓練生たちには一切事前予告はされていない、「ドッキリ」訓練なんです。

訓練の想定は、鳥取県西部地区で震度7クラスの大地震が発生。主要道路は寸断され甚大な被害があるため、訓練生は消防ホース25本の搬送指示を受けたというものです。

「ただいまから学生25名、災害対応訓練を実施します」

災害現場という過酷な環境、条件において職務を遂行するため、消防職員としての必要な体力、精神力の錬成及びチームワークを習得することがこの訓練の目的。
こうして、午前9時、鳥取県消防学校伝統、いわゆる「ドッキリ行軍」がスタートしました。

彼らが辿るのは全長およそ30キロのコース。
しかし、訓練生にはコース概要も知らされていません。
強い日差しが降り注ぐなか、1キロ10分のペースで黙々と歩き続ける訓練生たち。
リュックには重さおよそ10キロの消防ホースが入っていて、足や肩の疲労が徐々に蓄積されていきます。

行軍開始からおよそ2時間、訓練生は米子消防署伯耆出張所に到着しました。
重いリュックを下ろしてひと休み…かと思いきや、そこで訓練生たちを待ち受けていたのは…

教官
「追加任務を与える。4班編成。バスケット担架と要救助人形、セットにして親水公園まで搬送。搬送方法にあっては、訓練班長の指示に任せる」

そう、追加任務です。
内容は、6~7人で編成される班ごとに、バスケット担架と要救助者人形を次の目的地まで搬送するというもの。

ただでさえ重いホースを背負うなか、どの順番で、誰が持つのかなど、チームでの連携が求められます。

「じゃあいきまーす!」
「1・2・3!」

ここからが、きょうの訓練の山場。
合わせて、重さ50キロもある担架と人形を運びながら進む坂道が、訓練生たちの体力消耗に拍車をかけます。

「ファイト―!」

きつい状況下でもお互いに声を掛け合い、坂道では人形の頭の位置が足より下にならないように担架を持つ位置を工夫するなど、チームで協力しながら進んでいきます。

そして。

「学生25名、親水公園到着しました」

正午すぎ、要救助者人形を次の目的地まで搬送し終え、待ちに待った、昼休憩です。
訓練生たちががっつくのは、白米たっぷりの唐揚げ弁当。
これで英気を養います。

訓練生
「急だったので心の準備ができていなかったです」
「人形を持って歩いたときから結構疲れが出始めて、いまへとへとです」
「リュックの重さで肩が痛かったです」

教官は
「いつ何時大規模な災害が起こるかわかりません。それにもすぐに対応できる準備、それを学んでもらうことを目的としました」

午後1時すぎ、休憩をとって再出発。
残り半分、およそ15キロの道のりをひたすら前へ前へと進みます。

そしてついに…

午後3時半すぎ、鳥取県消防学校に訓練生25人が一人も欠けることなく帰ってきました。

「学生25名、任務を終了しました」

学校長
「きょう一日、大変なこともあったと思いますが、現場ではもっと苦しいこともあります。きょうのことを思い出しながら、今後の訓練にも生かしていただきたいと思います」

そして、教官が何よりも伝えたかった災害現場における「チームワーク」の重要性…
訓練生は身をもって感じたようです。

訓練生は
「達成感が一番強いです。体力的にも精神的にもきつかったんですけど、みんながいてくれたので、心強かったです」
「長い距離歩くので足の疲労と、ホース背負って歩いているので、肩と背中の方も結構きつかったです。みんなと頑張って達成できたと思います」
「一番後ろやったんで、みんなが頑張っている姿が見えたので、頑張ろうかと思って最後までできました」

寝耳に水のドッキリ訓練を終え、晴れやかな表情を見せる訓練生たち。
一人前の消防士をめざして、彼らの厳しい訓練の日々は続きます。

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