災害危険区域で結婚式「めでたぁあな♪」14年間復興支援を行う若者 東日本大震災被災地で<仙台市荒浜>

長持唄

「めでたぁあな♪」

祝の歌=長持唄に導かれ、震災の津波で被災した場所を練り歩く新婦。

若林区の荒浜地区で、かつて見られた伝統的な花嫁行列だ。

長持唄

「およめいりだぁ~♪」

出迎えたのは新郎。

元住民ら70人が2人を門出を祝った。

荒浜地区でかつて見られた伝統の花嫁行列

結ばれたのは秋田出身の畠山紳悟さん(30)と大崎市の佐々木梨乃さん(30)

2人は酒を酌み交わし、契りを交わした。

畠山紳悟さん

「地域の伝統行事を語り継いでいこうとやってきたなかで、この地域に還元できるものが無いかなと考えた時にたまたまで自分が結婚することになってこれいい機会だなと」

佐々木梨乃さん

「最初の話では内輪でやる予定だったが、こんなに外向きにやる感覚がなかった」

荒浜地区は津波で「住めない地域」に…

震災で、巨大な津波に襲われた荒浜地区。

2000人近く住んでいた集落は壊滅した。

その後、災害危険区域に指定され、住民は住みたくても、住めなくなり、皆バラバラになっていった。

その荒浜に通い始めたのが当時、東北大学の学生だった畠山さん。

復興支援のボランティアで通い始めると砂浜に打ち上げられるプラスチックなど海洋ゴミの深刻さに気づき、アート作品にすることで環境意識を高める活動をしてきた。

この活動に賛同した子どもたちが応援に駆け付けた。

大学生でボランティアに 活動続けるため仙台残る

畠山さんはこの活動を続けたいと、卒業後も仙台で就職した。

畠山紳悟さん

「大学卒業して仙台に残った理由は荒浜での活動があったから」

荒浜をきっかけに人生と職業が変わった。

畠山さんの活動を支えてきたのは、荒浜の元住民。

「ご結婚おめでとうございます」

そのひとり、媒酌人を務めた貴田喜一さん(78)

貴田さんは被災した自宅を改装し、支援活動の拠点・荒浜ロッジを運営。

畠山さんに活動スペースとして提供し、応援してきた。

結婚式会場に選んだのは、被災した家を改装した「荒浜ロッジ」

今回、結婚式の会場に選んだのが荒浜ロッジだった。

畠山さん

「血はつながっていないけど親戚みたい」

貴田さん

「復興に協力してくれたありがたさをこういう行事で返そうと、改めて良かったね」

畠山さん

「ある種身近なおじいちゃんおばあちゃん。礼儀作法から人とのかかわり方から、色んなことを学ばせてもらった。怒られながら」

若者が活動の拠点を求め荒浜に集まった結果、震災から14年目。「おめでとう」という言葉が聞かれるようになった。

元荒浜住民

「嬉しいっちゃ、畠山君がこうやってくれるから残っていく。それやらないと忘れられてしまう。そういえば本当におめでとうって禁句じゃないけど心から祝いだ」

「ここに住みたかった人の思い」を語り継ぐ

畠山さんの知人

「震災がきっかけでできたつながり。どんな人でも受け入れられて、ちょっとほっこりする場であってくれたらいい」

梨乃さん

「祝い事の場面が少ない。少しでも活気付けになればいいな」

畠山さん

「忘れられそうになることがある。その一つが伝統文化、ここに住みたかった人の思いが消えてってしまうのは悲しい。それを語り継いでいくことをしたい」

震災から14年目、災害危険区域に響いた、お祝いの言葉。

荒浜の街の記憶は若者に引き継がれている。

© 株式会社宮城テレビ放送