FA市場の目玉になってからたった1年半、総額50億円近くもの契約を残してアストロズが20年MVPのアブレイユを解雇<SLUGGER>

現地6月14日、アストロズは37歳の一塁手ホゼ・アブレイユを解雇したことを発表した。ホワイトソックス時代の2020年にMVPを獲得し、22年オフには各球団の争奪戦の末に3年5850万ドルで入団した大砲が、わずか1年半でチームを去ることとなった。

キューバ時代から勝負強いスラッガーとして活躍し、WBCにも出場したアブレイユが亡命したのは13年8月のこと。ハイチ経由でアメリカに渡り、ホワイトソックスと6年6800万ドルで契約し、ルーキーイヤーの14年にいきなり打率.317、36本塁打を記録した新人王に輝いた。19年には123打点で初のタイトルを獲得。短縮シーズンとなった20年には2年連続の打点王(60打点)に加えてMVPも受賞している。

22年オフにFAとなると、レッドソックスやマーリンズ、ガーディアンズ、パドレスなどが争奪戦に参加。結局、3年5850万ドルでアストロズに移ったが、新天地に移った途端にかつての打棒は見る陰もなくなった。23年は、第1号アーチが出たのは何とシー人50試合目。その後は持ち直したものの、OPSはキャリアワーストの.680にとどまる悲惨な結果に終わった。
今季も最初の22試合で打率.099と信じられない不振に陥り、5月にマイナー落ち。フロリダ州の球団施設でスウィングを調整するなど、約1ヵ月間不振脱却のために費やしたが、再昇格後の13試合で打率.167と上向かず。チームの低迷もあって、ついにアストロズは契約期間を半分残して解雇という決断に至った。

思えば1年半前にアブレイユ争奪戦を制した当時、アストロズにはGMが不在だった。世界一に導いたばかりだったジェームズ・クリックGMがオーナーと対立して電撃辞任。その後任が決まらないうちに、クレインが直々に交渉してアブレイユを獲得したという経緯がある。ワンマンオーナーの独断が、結果的に「球団史上最悪のFA契約」につながってしまった。

なお、残り契約3000万ドル(約00億0000万円)以上の支払い義務はアストロズにあるため、今ならメジャー最低保証年俸の74万ドルを支払うだけでアブレイユと契約できる。果たして獲得に名乗りを上げるチームは現れるのだろうか。

構成●SLUGGER編集部

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