「今後のベトナムサッカーを変えるキッカケになると思う」岩政大樹監督がハノイFCで目ざすもの【インタビューパート3】

2024年1月にベトナム1部のハノイFCの指揮官に就任し、結果を残している岩政大樹監督。彼はどんな想いで異国の地での挑戦を続けているのか。特別インタビューの最終回をお届けする。

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――岩政監督はプロの指揮官として、まだキャリアは短いと思いますが、ベトナムで経験値を積み重ねられているということですね。

「やっぱり経験しないと分からないことってたくさんある。そのひとつは、どのくらいで自分のチームができていくのかという感覚。特に攻撃面は、自分がどのくらいの期間で何を植え付けられるのか、正直、未知数でした。今思えば、そこは鹿島の監督に就任した時も(2022年8月から23年12月まで指揮)、自分自身、不安に感じていたのだろうなと。だから、実質監督1年目だった昨季(鹿島時代)は、守備からチーム作りを始めて、まずしっかりゼロで抑えることを念頭に、勝点を拾いながら攻撃を修正していった。

そのうえで自分が2年、3年と受け持つことになれば、チームを固めていったのだろうなと。それは僕の中で時間的猶予を設けるためだったんですが、結局、自分の中の不安だったり、経験値のなさが出てしまったんだと思います。

今回は逆に、最初から攻撃、それもフィニッシュの形から逆算したチーム作りに取り組んでいて、守備は前ほどはやらずに進めてみました。結果として、このくらいの期間でこうなるんだなというのは、僕の中で掴めた。すごく面白い5か月になりました」

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――では最後に、シーズンは佳境を迎え、ここからラストスパートとなりますが、そこでの目標は?

「ハノイでの半年間の集大成になるので、最高の締めくくりにしたいですね。ただ何よりも、ハノイの選手たちが、新しいサッカーにこれだけ前向きに取り組んでくれたので、実際にタイトルを取る経験をさせてあげたいとの想いが一番です。それが、恐らく、今後のベトナムサッカーを変えるキッカケになると思う。そのために、勝ち切りたい、タイトルを取りたいというのが最大の目標です。

最後のカップ戦の準決勝と決勝は、リーグ戦で僕たちが負けたチームと戦うんです。僕らはこれまで3チームに負けたのですが、その3チームがうちとともにベスト4に残っている。これも何かの縁だと感じるので、リベンジを果たして、優勝したい。

その3チームは、まさにベトナムサッカーらしいチームで、タレントも揃っているので、紙一重の試合になるはずです。ただ、僕らの異なるサッカーでタイトルを取る姿をベトナム中に見せたいですね」

※このシリーズ了

取材・文●平 龍生(サッカーダイジェスト編集部)

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