家事・育児・介護…妻がやったら「当たり前」、夫がやれば「ありがたい」 職場や家庭のジェンダー巡る「はて?」 内心ムッとしながらもスンッとやり過ごしてきたエピソード 知っておきたいホントの気持ち #こちら373

 女性法曹の先駆者、三淵嘉子をモデルにしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」が評判だ。主人公が男女の不平等などで納得できない時につぶやく「はて?」に共感が広がり、空気を読んで黙ってしまう「スンッ」も反響を呼ぶ。南日本新聞「こちら373(こちミナ)」で、ジェンダーを巡る身近な「はて?」を聞いたところ、女性を中心に地域や職場、家庭で感じた違和感エピソードが寄せられた。

 鹿児島市の会社員女性(38)は、5年前に娘が通っていた幼稚園の保護者説明会で、男性理事から言われた言葉に今もモヤモヤが晴れない。園長人事への要望を伝えると「どこの会社もこうしているはず。旦那さんに聞いてみて」と返されたからだ。

 集まった保護者は全員女性で、仕事を持つ人がほとんど。「母親は人事の仕組みを知らないとでも思っているのか」と内心ムッとしたが、「その場では『スンッ』としてしまい誰も何も言えなかった」と振り返る。

 「女の子って、いつも楽しそうでいいよね。キャッキャしてうらやましい」。同市の美術作家の女性(45)は、天文館で芸術イベントの準備中、通りかかった知人の50代男性にこう言われた。登壇者は全員女性で、30代後半以上の中堅ぞろい。見下したような発言に「真面目な内容で、笑い合っていたわけでもない。登壇者が男性なら絶対に言わないはず」と憤る。

 違和感は家庭の中にも。和泊町の幼稚園職員の女性(65)は「私が夫の親を介護するのは『当たり前』なのに、夫が私の親を世話すると、周囲は『すごい』『ありがたい』となる」と首をかしげる。

 鹿児島市の主婦(40)は夫の言動に失望を隠さない。「職場の女性が子どもの体調不良で休むと、夫は『週明け病だ。これだから(子持ちは)』とぼやく。わが家にも乳幼児がいて体調を崩すのに…。仕事も飲み会も、私が絶対に家にいる前提で予定を組む。散々指摘しても変わらず、心底冷めた」

 大阪大学大学院の招へい研究員で、鹿児島県立短期大学の元橋利恵非常勤講師(ジェンダー論)は「今の社会では、家事や育児、介護などといった『ケア』が不当に低く評価されている。女性がずっと無償で担ってきたため、市場的価値が低いとみなされている」と指摘。「ケア責任を負わない男性を標準とする労働環境では、ケアを抱える人が対等に競争するのはとても不利。誰もがケアを担いながら働き続けられる社会にしていかなければ」と訴えた。

主な「はて?」エピソード

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