気軽に登れる「低山」には思わぬ落とし穴が…人気の東京・高尾山でも遭難者が大幅増

山岳救助隊の出動も増えている(C)日刊ゲンダイ

山の事故が増えている。

警察庁が13日に発表した昨年の山岳遭難者数によると、前年から62人増の3568人で、統計を取り始めた1961年以降、最多となった。特に、観光地として人気の山で遭難が相次ぎ、過去5年間の平均と比較して、富士山は90%、穂高連峰は48%、遭難者が増えた。意外だったのは、気軽に楽しめる低山として知られる高尾山(標高599メートル)でも68%増と、遭難者が大幅に増加したことだ。

高尾山は東京都八王子市に位置し、都心から電車で約1時間というアクセスの良さ。ケーブルカーなどが利用でき、年齢と体力に応じて登山を楽しめることで人気だ。事故が急増した背景について、日本山岳・スポーツクライミング協会はこう分析する。

「コロナ禍が明け、多くの登山者が戻ってきたことで事故が増えたのだと思います。また、高齢者を中心に自粛期間に体力が衰え、転倒するケースも増えているのかと。いずれにせよ、比較的容易に登れる高尾山でさえ、危険な箇所は多く、思わぬ落とし穴があります」

高尾山の登山道は整備されているエリアも多いのだが、登山に関する著書があるジャーナリストの山田稔氏はこう指摘する。

「登山道には木の根っこや浮き石といった障害物、ぬかるみなどの悪路も多く、切り立った斜面などもあり、特に下りは事故が多発します。登山靴などしっかりした靴で来ないと、転倒や滑落の危険性がある。多くの事故は『高尾山なら大丈夫だろう』という慢心から起こります」

簡単に登れるというイメージが強すぎるあまり、こんな困った登山者もいるという。

「暑い時季に十分な水分補給をしなかったり、日が短い秋冬にもかかわらず、午後の遅い時間帯から山に入ったり、計画性のない登山も散見されます。中には、頂上で酒を飲み、酔っぱらったまま下山する人もいる」(山田稔氏)

どんな山でも、ナメたらダメだ。

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