医療チームが「門前払いされた」命を守る壁に“個人情報”…災害医療現場の課題が浮き彫りになった能登半島地震

MROをはじめJNN28局のニュースアプリ「NEWSDIG」の中から注目記事を深掘りします。今回は「支援の壁は“個人情報”…災害医療チームJMATの支援終了会見で見えた課題」についてです。

これは、全国から集まった災害医療チーム「JMAT(ジェイマット)」が、先月31日で支援活動を終了し、県の医師会が記者会見を開いたもので、会見では、高齢者への継続的な生活支援が必要といった現場から見えた課題について理解を求めていました。

ここで、能登半島地震で被災地に駆けつけた災害医療班についておさらいします。
災害救護チームのうちよく耳にするのが、災害時にいち早く駆けつけ、迅速な医療支援を行うDMAT(ディーマット)。そして、DMATから引き継ぐ形で、中長期で支援するのがJMATで、医療機関への支援や被災者の健康管理などを担います。

この他にも…精神医療を支援するDPAT(ディーパット)や、福祉支援を担うDWAT(ディーワット)などがあります。

今回、JMATが被災地から撤退する理由について石川県医師会の安田健二会長は、「行政が取り仕切る態勢が整い、行政からの要請がなくなった」ことを理由に挙げています。

一方で、避難所などを巡回しても門前払いされたことがあったと話しています。

なぜ?“門前払い”された医療チーム

命を守る医療チームが門前払いされたとは、どういうことなのか。安田会長によりますと、避難先の体育館や宿泊施設を巡回しても「個人情報の保護」を理由に立ち入れなかったということです。

安田会長はさらに「今回の震災の特徴というか、有事は個人情報が上回る(保護の制限をうけない)ということなのですが、それの周知徹底がなされなかった。来ても行っても門前払いだったということが、派遣して頂いたチームには申し訳ないなと思う」とも述べています。

また、安田会長は、訪問した施設で災害関連死で亡くなった人はいなかったとし、JMATの巡回について、行政から各施設への周知が不足していたと苦言を呈しました。

政府の個人情報委員会でも、「災害などの緊急時に生命や財産の保護のために必要で本人の同意を得ることが困難なら、本人の同意なしに提供は可能」としていますが、「同意を得ることが困難なら…」という部分の解釈で、現場の対応が十分ではなかった可能性があります。

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