タワマンの機械式駐車場が故障も修理する気はナシ 住民の訴えも届かず「難しい」

タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】

駐車場故障を管理会社に伝えても「どうにもできない」

関東運輸局の調べによると、2023年3月末時点での東京都の自動車保有車両数は自家用車で254万5220台。20年時点での東京都の総世帯数(令和2年度調査国勢調査より)が722万7180世帯だったので、東京都内に住む家庭の約3分の2がマイカーを持たずに暮らしていることになる。若者を中心とした「マイカー離れ」から、敷地内駐車場の台数を減らして新築されるマンションや、既存の駐車場を有料駐車場として周辺住人に貸し出すマンションが増加。今や「駐車場」は、マンションにとって負債の一部になりつつあると言っても過言ではないだろう。

さて、こうした「マイカー離れ」は、意外なところにも影響を及ぼしているという。

「僕が住んでいるタワーマンションは、敷地内に二段式の簡易型立体駐車場が設置されています。そのうちの1つを借りていたのですが、先日、故障してしまいました。別のところが空いていたのでそこに移って事なきを得たのですが、壊れた駐車場を修理してほしいと何度も申し入れているのに、『駐車場の採算が取れていないため、修理に回すお金がない』からと、断られ続けています」

こう話すのは、関東某所のタワーマンションに住む谷合康史さん(仮名・38歳)。「酒もやらず、たばこもやらず、唯一の趣味である『車』に金をつぎ込んできた」と自負するサラリーマンだ。

「この調子でいくと、時間とともにどんどん駐車場が壊れていくのでは、と不安でいっぱいです。そもそも『採算が取れない』からと、マンションのサービスを停止するのはいかがなものでしょうか。しかし、管理会社に言っても『どうにもできない』と言われてしまいました。そもそも、駐車場があるからこのマンションを購入することを決めたところがあります。何もしてくれないのは普通のことなのでしょうか?」

無い袖は振れない? 非情な現実「修理してもらうのは限りなく難しい」

駐車場が故障したままでは、マンションの資産価値そのものも下がるのではないかという点も、康史さんにとって心配の種になっているという。しかし、無い袖は振れないというのも理解ができる話。現状、どういった対応を求めることができるのか。中目黒「コレカライフ不動産」で日々、不動産のリアルと向き合う姉帯裕樹さんに聞いた。

「駐車場の管理運営を行っているのが管理組合であれば、修理をするもしないも管理組合の采配1つです。現状、収入が少なく、維持するだけで手いっぱいという状態であれば、修理してもらうのは限りなく難しいと言えるでしょう。別の場所に停めることができているのであれば、あまりしつこく管理組合に申し入れない方がいいようにも思います。いつかきちんと修理をしてもらうという言質だけ取り、様子をみてはいかがでしょうか」

ちなみに、タワー式の駐車場が故障した場合はすべての車が利用できなくなるため、近隣駐車場を借りるための費用を出すだけで日に数十万円という莫大な費用を要した例もあるという。少ない敷地に設置できる機械式駐車場は、メリットもある分、多大なリスクも含んでいる。

「機械式の駐車場は、メンテナンスの費用がかかる上、10年以上が経過すれば故障が起こるリスクが上がります。駐車場代を値上げする、不要な(空いている)駐車場は廃棄する、といった抜本的な改革も必要かもしれません。もちろん、解体・撤去するにも費用がかかるため、放置せざるを得ないこともあるかと思います」

たとえマンションであっても、採算が取れない部分は切り捨てていくしかないということ。駐車場が負の遺産となりつつある現代社会で、あくまでも「車」を中心とした生活を続けたいのであれば、駐車場付きの戸建てに住み替えるなど自ら対策することも必要かもしれない。

□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。和栗恵

© 株式会社Creative2