3児のパパが娘に見せた勇姿 一時は競技から離れた異色のゴルファー・37歳の林拓希が初優勝【九州オープンゴルフ】

子どもたちと喜びを分かち合う林

ゴルフの九州オープンは16日、大分市の大分カントリークラブ月形コース(7214ヤード、パー72)で最終ラウンドが行われ、林拓希(フリー)が藤島晴雄(進電グループ)とのプレーオフを制して初優勝した。

首位と1打差の3位でスタートした林は通算4アンダー、284で首位と並び、プレーオフの1ホール目を制した。1打差の3位は蛭川隆(フリー)が入った。ベストアマは通算1オーバーの8位で回った遠藤崇真(皐月)。

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耳に届いた声援が力になった。林は16番ショートでグリーンに着くと、子どもたちの「パパがんばって」の声が聞こえた。「そこでもう一息、頑張ろうと思えた」。7メートル弱のバーディーパットを沈め、勢いを取り戻した。

藤島、蛭川との首位争いが続く中、直前の14、15番で連続ボギーをたたいた。耐える展開の中で、気持ちを奮い立たせる理由があった。3日目を首位と1打差の3位で終え、初優勝のチャンスが見えてきたことで、最終ラウンドには茨城県に住む妻と3人の娘が急きょ現地まで応援に駆け付けた。

18番ロングで行われたプレーオフではグリーンそばからの3打目を確実に寄せ、バーディーを奪って競り勝った。優勝が決まると、駆け寄ってきた子どもたちと抱き合った。「ラウンド中も子どもの声が聞こえると泣きそうになって…。ゴルフをしている姿をあまり娘に見せていないので、うれしいという以外の言葉がない」。栄冠をつかむと、勝負師の表情が一転してパパの顔になった。

鹿児島県霧島市出身で、福岡・柳川高を経て、2007年にプロテストに合格した。20代の後半には仕事に専念するため、競技から離れた時期もあったという。再びプロとして勝負するようになった現在は「ゴルフが楽しい」と表情を緩める。

体重90キロと大柄ながら、アプローチやパターといった小技を得意とする。「歴史ある試合に勝てて、本当にうれしい」。異色のキャリアを持つ37歳は、父の日に自ら花を添える初優勝で、家族とともに喜びを分かち合った。(松田達也)

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