【社説】地方創生10年 成果が乏しいのはなぜか

政府は地方創生の失敗を率直に認め、原因を追究した方がよい。不明確なままでは、この先の人口減少対策もさしたる成果が出ないだろう。

2014年に当時の安倍晋三首相が看板政策として地方創生を掲げてから、ちょうど10年になる。政府はこの間の総括を報告書にまとめた。多額の公費をつぎ込んだ以上、検証するのは当然だ。

残念ながら成果や課題の分析が甘く、今後の施策に生かす道筋も具体的ではない。

地方創生は人口減少対策を主眼にスタートした。増田寛也元総務相を中心としたグループによる将来人口推計で、896市区町村の消滅可能性が指摘され、にわかに高まった危機感が背景にある。

政府は人口減少にブレーキをかけ、過度な東京一極集中を是正することに重点を置いた。いずれも状況は10年前より悪化している。

東京圏1都3県の転入超過数は14年よりも23年の方が多い。日本全体の人口が減る中で東京圏の比重はますます高くなっている。進学、就職の時期に地方から転入する女性が目立つ。

短期間で成果を出すのが困難な課題かもしれない。そうであっても、過去の施策に何が欠けていたかを明らかにすべきだ。

報告書は「成果と言えるものが一定数ある」と自己評価した。人口が増えた地域があり、地方移住に関心が高まったことなどを挙げている。

否定はしないが、地方創生の施策による効果と言えるだろうか。報告書からは因果関係がはっきりしない。

10年前に比べ、地方創生に対する政府の熱意は明らかに低下している。岸田文雄首相が新たな地方政策として打ち出した「デジタル田園都市国家構想」は影が薄い。

それでも人口減少対策には継続して取り組まなくてはならない。これまで政府は地方創生に取り組む自治体を支援する立場を強調してきたが、政府の責任でやるべきことを明確にしてもらいたい。

特に少子化対策は政府主導で強力に進めるべきだ。東京一極集中の是正も、政府が本気にならないことには動かない。手段の再検討を求める。

自治体との連携方法も見直すべきだ。政府は自治体に地方創生の計画を提出させ、年額で1千億円を超える交付金を配分してきた。

これには「ばらまき」の批判がある。省庁の予算や事業をチェックする22年の行政事業レビューでは、政策効果が疑問視された。

自治体は移住の受け入れや起業支援、交流施設の整備、イベントなど幅広い事業に交付金を活用した。半面、地方創生との関連が疑われるものも確かにある。

使い勝手がよい交付金に依存し、財政規律が緩んだことはなかったか。そもそも地方創生の目的が曖昧になっていないか。自治体でも検証作業が不可欠だ。

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