【コラム・天風録】「生活し続けられる青森に」駅

 6月には水無月(みなづき)に限らず、幾つも異名がある。滴る青葉の色を添えた青水無月。蒸し暑さで気がめいり、涼感に焦がれる風待(かぜまち)月。日の長さから、長夏(ちょうか)というのもある。肌感覚に合うからこそ、息づいてきた呼び名だろう▲こちらは当面、1年限りの呼び名だという。青森の津軽鉄道が命名権を売りに出した駅の愛称が決まり、その一つが関心を集めている。「生活し続けられる青森に」駅で、値は30万円也(なり)▲正式な駅名は「五農校前」。五農は創立120年を超す県立五所川原農林高のことである。それに引き換え、愛称の副駅名は、次の衆院選に名乗りを上げている秘書上がりのうたい文句らしい。何とも勘定高い▲「よそ者」が付けた愛称もある。ご当地アニメを制作した東京の企業名を冠した「月虹(げっこう)~見た方々に幸せを~」駅と、お笑い芸人が名付け親の「鉄道芸人 太田トラベル」駅。本州最北で頑張る私鉄の沿線住民にとって、頼もしい応援団に違いない▲ご多分に漏れず、赤字ローカル線を抱える中国山地にも一筋の光明が差したのではないか。駅名一つで人の縁を結び、観光効果だって望める。JR側の理解が得られるなら、命名ツアーに誘う手もありそうだ。

© 株式会社中国新聞社