斎藤佑樹 「こんなに幸せな野球人生ってない」恩師である栗山秀樹元監督から言葉がとても素晴らしかった

元プロ野球選手でキャスターの斎藤佑樹が、6月15日放送の『Google Pixel presents ANOTHER SKY(アナザースカイ)』に出演。人生の転機となったオーストリア・ゴールドコーストで、ケガに苦しんだ現役時代を語った。

斎藤にとってゴールドコーストで最も思い入れの深い場所が、自主トレをしていた場所である『サーファーズ・パラダイス・ベースボールクラブ』。2018年のシーズンオフに初めて訪れて以来、何度も足を運んだという。「街中からあんまり離れていない場所ですけど、こんなに広い野球場が堂々とあるってぜいたくだなって思いますよね」と語る斎藤。「うわぁ、なんか懐かしい。きれいですね」グラウンドに一礼して入ると、感慨深そうに辺りを見回す斎藤は「この中でプレーする野球がすごく好きでした」と言う。

自主トレをしていた球場を訪れる斎藤

プロ生活は11年。そのほとんどがケガとの闘いだった斎藤。まさかそんな状況になるとは、学生時代を知る誰もが想像しなかった。栄光の始まりは2006年夏の甲子園。早稲田実業のエースとして決勝に出場し、田中将大(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)を擁する駒大苫小牧(こまだいとまこまい)との死闘に勝利。名門・早実を夏の甲子園初優勝へと導き“ハンカチ王子”ともてはやされた。早稲田大学に進学後は、1年生ながら開幕投手になると、史上6人目となる大学通算30勝300奪三振を達成。ドラフト会議では4球団から1位指名を受け、北海道日本ハムファイターズへと入団した。“新たな伝説の幕開け”と、誰もが信じていた。「“プロ野球でどんだけ活躍してやろうかな”なんて、ちょっと生意気なことを考えてましたけど。でもいざ、プロ野球の世界に挑戦して、全然勝てなくて」と、当時を思い出す斎藤。プロに入って最初に衝撃を受けたのは“選球眼”の違い。学生時代の斎藤はボール球を振らせて空振りで三振を取るというスタイルだったが、プロはボール球を振らないためストライクゾーンの中で勝負をしなければならない。今までのピッチングスタイルと大きく変わったため、悩みを抱えていたという。「スタイルを徐々に変えていかないといけないんだなっていう諦めのなか、でもトライアンドエラーを繰り返して。変化球の数も増えましたし、相手の分析も当然今までよりもたくさんするようになるし」。その試行錯誤が実を結び、プロ2年目では前半に5勝し「今年行けるな」と思った矢先に肩を故障してしまう。

ケガでマウンドにすら上がれず、治っても結果がついてこない。押し寄せる焦りと絶望のなかで「こんなはずじゃない。“お前はもっとやれる”って自分自身に言い聞かせていた。そうやって強がっていた部分もあったっていう」と、栄光を知っているからこそ、自分自身を諦められなかった斎藤。未勝利に終わった8年目の冬、再起をかけて訪れたのがオーストラリア・ゴールドコーストだった。暖かい気候のゴールドコーストはトレーニングには最高の環境だったという。

マウンドに立つ斎藤

走り込みをしたり、ロープをつるしてリハビリを兼ねたトレーニングをしたり、ブルペンではなくメインのマウンドでピッチング練習をしていたという。身体を動かし始めると、これまでにない手応えを感じた斎藤。「いよいよ自分の身体が元気になってきて、復活というわけじゃないですけど“ここから上っていくぞ”みたいな身体の状態でした」。最高の自分を取り戻せるかもしれないと、期待を胸に迎えた9年目のシーズンだったが、ケガは治りきっておらず勝つことはできなかった。

恩師である栗山(秀樹)監督(当時)からは、“今は苦しいかもしれない。けど、泥だらけになってがむしゃらになってプレーしている姿っていうのを多くの人に見せなさいと。辞めるのは簡単だけどいずれ佑樹のためになるから”と会うたびに言われるが、当時の斎藤は自分を理解してもらえないとあらゆることに疑心暗鬼になってしまっていた。結局、恩師の真意を図りかねたまま2021年に現役を引退。最後のマウンドを終えると、栗山監督が声をかけてくれたという。「栗山監督が肩をポンポンたたいてくれて、“佑樹これが、佑樹が見せ続けてきた姿だぞ。みんながこれだけ多く見てる、よく頑張ったな”って言ってくれて」。振り返るとスタンドを埋め尽くすほどの大観衆が、斎藤の引退にエールを送っていた。「引退した瞬間にやっと分かったというか、頑張ってきてよかったなって思えた瞬間。悔しい思いはたくさんしましたけど、すごく幸せだったなっていう思いで涙が出てしまいましたね」。“こんなに幸せな野球人生はない”そう、現役時代を振り返る斎藤だった。

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写真提供:(C)日テレ

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