【水道耐震化】相次ぐ災害へ備え急げ(6月17日)

 発生から5カ月が経過した能登半島地震では、水道管や浄化施設の破損が相次いだ。先月末現在、石川県の輪島、珠洲両市で約1900戸が断水しており、生活再建の大きな妨げになっている。福島県では、耐震性を備えていない基幹的な水道管の割合が約4割に上る。自治体の財政状況は厳しさを増しているが、相次ぐ災害に備え、あらゆる方策を講じて予算確保に万全を期すべきだ。

 石川県全体の基幹的水道管の耐震率は36.8%で、全国平均の41.2%を下回っていた。浄水施設は76.0%、配水池は61.6%だった。それぞれの耐震化率が現状より高ければ、最大で11万戸に上った断水戸数を抑えることができた可能性もある。

 一方、福島県の基幹的水道管の耐震化率は59.0%、浄水施設は42.1%、配水池は50.1%となっている。東日本大震災が13年前に発生して以降、震度6クラスの地震に2度見舞われていることを踏まえれば、耐震化は急務と言える。

 水道事業は原則、水道料金収入によって運営されている。人口減少に伴い収益が減少すれば、自治体や事業団の経営が成り立たなくなる恐れがある。過疎化の進む地方では、経営の安定や施設の維持・管理に充てる財源の先細りが特に懸念される。県は2009(平成21)年度から2070年度までに、県平均の料金収入が23.7%減ると想定している。さらに、2070年度の施設更新費は351億円に達すると試算する。2021年度までの5年平均の1.8倍に当たる。

 全国知事会、市長会、町村会、議長会など地方6団体が連携を強め、財政支援の拡充や新たな制度の創設を国に求める必要があるのではないか。住民に対しても経営状況を周知し、負担のあり方を議論する機運を高めていかなければならないだろう。

 水道施設の維持、更新を担う水道関連事業者は年々、減少している。福島市や伊達市などの事業者でつくる福島地区管工事協同組合の場合、加盟社は39社で10年ほど前に比べて約4割減っている。業界の安定経営を後押しする取り組みも欠かせない。従業員の年齢層は40代以上が8割近くを占めている。技術を継承する担い手の切れ目ない育成も求められる。(神野誠)

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