【震災・原発事故13年】被災地の大径材流通拡大 2025年度にも大規模加工施設 福島県内の林業再生加速

 田村森林組合(本所・福島県田村市)は、東京電力福島第1原発事故で避難区域が設けられた12市町村を含む被災地産の木材流通を拡大する。太くなりすぎた大径材(細い方の切り口の直径が30センチ以上の丸太)も加工できる大規模施設を2025(令和7)年度にも田村市内に新設する。「ふくしま森林再生事業」で被災地の木材の流通量は今後、一層増える見通しで、利活用が課題となっている大径材にも対応できる加工拠点を整えることで県内林業の復興を加速させたい考えだ。

 新たな加工施設は田村市常葉町の組合事務所隣接地に建てる。総事業費は17億8千万円で、5棟の建屋に大径材にも対応する製材機や選別機、乾燥機などを設ける。2025年度の完成後、2030年度までに県産材利用量を年間4万3千立方メートルにする計画。柱や角材などを生産し、被災地産材のブランド化を進める。

 林業の担い手育成も強化し、2030年度までに帰還者や移住者を中心に12人の新規雇用を目指す。県森林組合連合会は、大径材の加工施設を持つのは県内の森林組合では田村が初めてとしている。県によると、中通りで原発事故発生後にできる木材加工施設としては最大規模となる。

 原発事故発生後、被災市町村は「ふくしま森林再生事業」に取り組んでいる。市町村の森林整備に必要な費用の大半を国と県が支援する事業で、避難区域設定12市町村の進捗(しんちょく)状況は【表】の通り。田村、南相馬両市は事業開始から10年余りとなり、大熊町は今年度、全体計画の策定を開始する。これまで営林活動ができなかった帰還困難区域で将来的に営林が再開できる可能性も政府によって示されており、伐採量は今後、増える見込みだ。

 さらに国内では戦後に植樹された森林の大径材の利活用が課題となっている。県内では原発事故の影響で森林整備が一時期滞ったことから大径材が増え続けている。県によると、浜通りには大径材を加工できる民間施設が少なくとも1カ所あるが加工の需要はますます高まる見通しで、田村森林組合は新たな施設設置が被災地の森林整備推進に欠かせないと判断した。浜通りに隣接し交通の便が比較的よいという田村市の立地を生かし、被災地から木材を集め、広く流通させる。

 田村森林組合の矢吹盛一組合長は「新たな施設を通じて福島県林業の再生と活性化につなげたい」と話している。

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