消防操法大会縮小の波 福島県内、訓練の負担軽減へ 「サラリーマン団員」今や8割 現場対応力維持へ対策

新入団員向けに実施された消防技術講習会=会津若松市、5月

 福島県と県消防協会は8月の県消防操法大会を2種目制から1種目制に規模を縮小させる。県内では事業所勤めの「サラリーマン消防団員」が8割を占め、勤務前後の訓練が負担になっているためだ。県大会の前段となる支部大会を見直す動きも広がり、消防協会の全20支部のうち8支部が新型コロナ禍の大会中止期間を経て、廃止もしくは見合わせを決めた。一方、大会は団員の技術向上と連帯を強める側面がある。各消防団は現場対応力の低下を招かないよう、対策を講じている。

 操法大会は市町村または広域の支部大会が最初の予選に位置付けられ、上位の県、全国大会につながる。県大会は新型コロナ禍を除き、ポンプ車操法と小型ポンプ操法を実施してきたが、今後は全国大会に通じる1種目のみを対象とする。出場人数を減らすことで団員の負担軽減につなげる考え。

 福島民報社が全20支部の事務局に聞き取りした結果、支部単位で大会を開催しないのは本宮、郡山、田村、東白川、白河、猪苗代、会津若松、会津坂下の8支部。このうち、郡山、田村、白河は県大会への出場チームも選出しない。

 現時点で大会を維持させているのは須賀川、喜多方、南会津、いわき、相馬の5支部。これ以外の7支部は従来、支部大会を実施しておらず、支部内の協議や輪番などで上位大会の出場チームを選出してきた。

 支部大会に出場する浜通りに住む40代会社員の消防団員は、仕事と家庭、訓練の両立に悩む。「連日、訓練があり、家族と過ごす時間が少なくなる。仕事にも影響が出かねない」と打ち明けた。県消防協会の西山敏彦会長(64)=福島市消防団長=は「(大会の見直しは)団員の負担減になる」とした。ただし、練習によって技術を高められたとの声も聞いているという。「一律に支部大会を簡素化する状況ではなく、各支部の考えを尊重したい」と話す。

 各支部が負担軽減を考慮する背景には団員数の減少がある。過去10年間の団員数と充足率、平均年齢の推移は【表】の通り。団員数は2014(平成26)年度の3万4465人から、2023年度には約5千人減少した。

 消防行政に詳しい関西大社会安全学部の永田尚三教授は、大会見直しは全国的な動きで、団員確保にはプラスに働くと分析する。ただし、消防団には災害対応など求められることは増えてきていると指摘。「建設や医療など団員の職業を生かして活動の質を高めるべきだろう」と提案した。

 各消防団は現場での対応力を維持させるため、新たな試みに乗り出している。会津若松市(会津若松支部)は支部内の大会を見合わせたほか、今年度から春と秋に実施していた検閲式も秋に一本化した。市消防団は役職や階級に応じた定期的な講習会を今年4月に本格化させ、内容には救急講習も盛り込んでいる。

※消防操法大会 消防用機械器具を迅速、確実、安全に取り扱い、その技術力をチームで競う。消防ポンプ自動車を使用した「ポンプ車操法」と、持ち運び可能な小型動力ポンプを使用した「小型ポンプ操法」の2種目がある。全国大会は隔年で開催。今年は宮城県利府町で10月に開かれ、各都道府県の代表が出場する。福島県代表は今回、小型ポンプの部に出場する。

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