【岩本輝雄】町田の下田が絶妙なアクセント。今後さらに活躍しそうな予感。FKのポイントずらしは、僕もよくやっていた(笑)

[J1第18節]横浜 1-3 町田/6月15日/日産スタジアム

力強い戦いぶりだった。J1で首位に立つ町田がマリノスに逆転勝ち。町田は今季、先制されたら勝てていなかったけど、この日は見事に試合をひっくり返してみせた。

1点ビハインドで迎えた前半終了間際に、得意のセットプレーから昌子が同点弾をゲット。後半には藤尾のゴールで逆転して、下田の直接フリーキックでダメを押す。

下田のフリーキックは素晴らしかった。簡単に決めたように見えるけど、けっこう難しいと思う。でも、コースもスピードも完璧。期待に応えてみせた。

フリーキックを蹴る前に、ボールをセットする位置を少し下げたよね。まあ、ルール的にどうなのかな、という部分はあるんだけど、実際、僕も現役時代にはよくやっていた(笑)。主審が目を離した隙に、サッとね。

ゴールまで近すぎると、ちょっと蹴りづらかったりもする。壁を見ながら、感覚的にこのぐらいの距離がいいな、という感じなんじゃないかな。いずれにしても、キックの精度に定評がある下田らしいフリーキックだった。

【動画】岩本輝雄がトッティとサッカー対決!
決定的な仕事以外でも、下田はマリノス戦で抜群の存在感を放っていた。カウンター主体の町田で、ボランチのポジションで粘り強い守備やテンポの良いパス出しを見せつつ、キープするところはキープして、リズムを変えたりもする。

チームのスタイルを体現しながら、自分の持ち味も出す。絶妙なアクセントをもたらしていたと思う。

今季の最初のほうは途中出場が多かったけど、久々に先発した5月のレッズ戦では、PKで決勝点をマーク。そして、今回のマリノス戦でも目に見える結果を残してみせた。

少なくない怪我人に悩む町田で、下田はさらに活躍しそうな気がする。まだ32歳。これまでのいろいろな経験をベースに、今、良い味を出しているように思う。熟練のプレーで、首位を走るチームを盛り立ててほしいね。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、52歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた“40メートルFK弾”は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。23年に『左利きの会』を発足。

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