「10年くらいやって、ようやく…」アビスパ福岡で活躍した長身FWが感じる指導者の喜びと悩み 佐賀・龍谷高で全国総体初出場

選手に指示を出す龍谷の太田恵介監督

◆全九州高校サッカー大会男子決勝・日章学園7―1龍谷(17日、大分スポーツ公園)

初の決勝進出を果たした龍谷(佐賀)は圧倒的な攻撃力を誇る日章学園(宮崎)に思わぬ大敗を喫した。190センチを超える長身を武器に、J1アビスパ福岡でプレーした経験を持つ太田恵介監督(45)は「選手たちが成長するチャンスになる。いい経験ができた」と前向きに受け止めた。

2013年に就任し、一歩ずつ前進してきた。かつては試合に負けた悔しさや怒りを厳しい言葉に変え、選手にぶつけていたという。「最初は感情で動いていたというか、自分の『勝ちたい気持ち』が先だった。こっちが怒るほど、選手は冷めるというか、沈んでしまう。きっと言葉も刺さっていなかった」。そんな時期を経て、選手へのアプローチも変えていった。「今は選手に自問自答させるようなイメージにしている。選手が『勝ちたい』と思わないと、努力しないので。こちらは言わないといけないことは伝えても、次の日に引きずらない」。経験を重ね、自分なりの指導法を確立しつつある。

冬の全国選手権には2018年度大会を皮切りに既に3回出場。今夏には、全国総体の出場権も初めてつかんだ。将来、自身のようなJリーガーを輩出したいという気持ちは強い。それでも、優先順位を間違えることはない。「プロを経験した自分は、高校や大学の恩師に教わったことを自分なりに解釈し、かみくだいて、伝える側になった。プロになる選手が出てほしいけど、みんながJリーガーになれるわけではない。社会に出て活躍する人材になってほしい。大事なのは、ここでの3年間でどう成長するかだから」

スタイルを変えながら、現在は指導者として九州のサッカー界に確かな一歩を刻んでいる。「10年くらいやって、ようやく見えてきたのかな」。今大会での悔しさを生かし、初めての夏に臨む。
(松田達也)

© 株式会社西日本新聞社