【社説】G7サミット 危機克服へ広範な協調を

イタリアで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとする危機に結束を表明した。G7のリーダーは足並みをそろえ、新興国とも手を携えて、世界を平和と安定に導いてもらいたい。

首脳声明に「国際社会は互いに絡み合った複合的な危機に直面している」と記したように、G7は解決困難な問題を数多く抱えている。

その中でウクライナ支援について、制裁で凍結したロシア資産を活用して500億ドル(約7兆8千億円)規模を提供することに合意した。

米国や欧州では資金と物資の両面で「支援疲れ」が表面化しており、新たな資金提供に道筋を付けたのは大きな成果と言える。

ロシアを支援する中国には毅然(きぜん)とした態度を示した。ロシアの軍事物資調達を支援する中国の金融機関などは、国際金融ネットワークから排除することで一致した。

中国に対しては、南・東シナ海での海洋進出にも強い懸念を示し、一方的な現状変更の試みに反対した。中国が過剰に生産した電気自動車(EV)などを低価格で大量に輸出していることにも問題意識を明確にした。

厳しい批判を受けた中国の反発が気になるところだ。G7には中国の動きをけん制しつつ、対話で現状を改善する努力を求めたい。

パレスチナ自治区ガザの情勢に関しては、バイデン米大統領が公表した新たな停戦案を各国が全面的に支持した。戦闘が始まってからガザの死者は4万人に迫る。関係国への働きかけを強め、早期に停戦を実現させてほしい。

G7首脳に求められるのは具体的な成果である。実行力を発揮するのに重要なのは各国の結束だ。

最大の不安要素は11月の米大統領選だ。自国第一主義のトランプ前大統領が返り咲けば、米国はG7など多国協調の枠組みに再び背を向ける恐れがある。

自国優先の風潮は米国だけの問題ではない。近く行われる英国やフランスの総選挙の結果を揺るがしかねない。日本も秋に自民党総裁選を控える。G7は首脳の顔触れが変わろうとも、結束を維持しなくてはならない。

50回の節目を迎えたG7サミットは影響力の低下が指摘されている。1980年代後半は国内総生産(GDP)の合計で世界の7割近くを占めていたが、最近は4割程度に落ちた。

逆に経済成長著しい中国やインドに象徴される新興国の存在感は高まる一方だ。G7は民主主義の価値観を共有する新興国との関係強化がますます問われよう。

今回の首脳声明には石炭火力発電所の2030年代前半の廃止、核軍縮・不拡散の取り組みなども盛り込まれた。世界規模の課題に対処するためにも新興国との広範な協調が欠かせない。

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