広島県廿日市市のホテルで男子大学生に注射器でアルコールを摂取させるなどして、殺害した罪などに問われている男の裁判員裁判が始まりました。
検察側は、「被告は、偽物の自分=替え玉を仕立て上げて殺すことにした」などと主張しました。
殺人などの罪に問われているのは、広島市西区の職業訓練生・南波大祐 被告(33)です。起訴状などによりますと、南波被告は2021年11月、愛知県の大学生・安藤魁人 さん(当時21)に4種類の睡眠導入剤をひそかに混入させるなどした飲食物を摂取させ、廿日市市のホテルに連れ込んだとされます。その上で安藤さんに注射器でアルコールを摂取させて意識障害を生じさせ、吐しゃ物の誤嚥によって窒息死させた罪などに問われています。
あごひげを伸ばした姿で法廷に現れた南波被告は、裁判長から罪状について問われると「すべて黙秘いたします」と話しました。
検察側は冒頭陳述で、被告の犯行計画について、「被告は、もともと生命保険に加入していたところ、それに上乗せして、自身に多額の生命保険を掛け、その受取人を弟にしていた」と指摘。
「そのうえで、”本物” の南波大祐が死ぬのではなく、替え玉つまり ”ニセモノ” の南波大祐を仕立て上げて殺すことにした。替え玉として、大学生の安藤魁人さん(当時21)に睡眠導入剤を飲ませた上で、廿日市市内のホテルでアルコールを注入した」などと主張しました。
また、「南波被告は、2021年5月ごろからインターネットで『保険金殺人』などと検索するようになった」「事件後、弟になりすまし119番通報して、傷病者の名前は南波大祐だ。自分はその弟だと嘘の説明をした」などと指摘しました。
一方、弁護側は南波被告がひそかに安藤さんに睡眠導入剤を摂取させたことなどは認めつつ、被告による殺人が立証できるのかなどを争う姿勢を見せました。
裁判では今後、証人尋問などが行われ、7月2日に判決が言い渡される予定です。