「パリ五輪メンバー入りは確実ではないのか」と思わせるほどの異彩。遅れてきた天才アタッカーが磐田戦で醸し出した独特の雰囲気

2024年6月16日、FC東京と磐田が1-1と引き分けた一戦の後半、ピッチで誰よりも違いを見せつけていたのは荒木遼太郎だった。ボールを持てば独特の雰囲気を醸し出し、予想を上回るフェイントで相手を翻ろうする。

この日の荒木は56分にディエゴ・オリヴェイラに代わって途中出場。なぜスタメンで使わなかったのか。そう思えるほど、身体はキレていた。ファーストタッチ、ボディバランス、マーカーとの間合いの取り方、その全てが一級品で、まさに異彩を放っていた。

本人もコンディションの良さは自覚しているようで、試合後のミックスゾーンでは「今日の試合は湿度も高くて最初は大変でしたが、時間の経過とともに合わせることができました。イメージ通りにプレーできて味方との関係も良かった」と話していた。

「最後のところだけ合わなかった」と本人が言うように、その前までは創造性豊かなプレーで攻撃陣をリード。このコンディションならパリ五輪メンバー入りは確実なのではと、そう思えるほどの存在感を示した。

持ち上げ過ぎ? いや、そんなことはない。磐田戦を見たFC東京のファン・サポーターなら、彼の存在感の大きさを理解してもらえるのではないだろうか。

攻撃的なタレントで言うと鈴木唯人(ブレンビー)が現実的にパリ五輪招集不可で、“黄金の左足”と評される山田楓喜(東京ヴェルディ)はU-23アジアカップ以降のリーグ戦でパッとしない。その背景を踏まえても、荒木のパリ行きは決定的ではないのか(ここから怪我などのアクシデントがなければという条件で)。

昨季は鹿島アントラーズで出番に恵まれず、世代別代表からも遠ざかっていた。それが今季のFC東京移籍を経て、リーグ戦でゴールを量産すると、3月、U-23 日本代表のメンバーに2年ぶりに復帰した。遅れてきた天才アタッカーはその後、U-23アジアカップでも持ち前の技巧を見せつけるなど輝きを放っている。

Jリーグの舞台で主役候補に躍り出ている荒木に五輪のステージでも躍動してもらいたい。メンバー発表が実に楽しみだ。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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