「ゆめタウン諫早」(仮称)大型開発事業着工 雇用創出や地域活性化に期待 長崎・諫早 

ゆめタウンの完成外観イメージ図(イズミ提供)

 長崎県諫早市長野町で「ゆめタウン諫早」(仮称)を核とした大型開発事業が着工した。少子化や若者の県外流出が続く中、地元では交流人口拡大、雇用創出、若年層の定住促進など地域活性化への期待感も高い。一方、地場小売業者の間には危機感も強く、ゆめタウンとの差別化、共存・協調関係の構築などが鍵となりそうだ。
 「とても楽しみ。町のにぎやかさも増す」。贈答品の買い物や映画鑑賞のため市外まで出かけているという無職女性(73)は開業を心待ちにする。
 ただ、市民からは交通渋滞への懸念も。団体職員の女性(56)は「諫早にはなかったような店が入るかワクワクしている」と期待しつつ、「建設地周辺はただでさえ渋滞する。家族をかかりつけの医療機関まで車で送迎しているが、渋滞がひどくなると利用しづらくなる」と心配する。
 一方、市役所に近い中心部商店街の関係者は開業の影響に気をもむ。小売業を営む40代男性は「品ぞろえが多いであろう大手の出店は脅威。若い世代の客層は流れると思う」と懸念。対抗策として「店の専門性を高めて消費者にPRし、個人だけでなく法人向けにも販売ルートを広げていきたい」と話す。
 人手不足の中、開業後は市内での人材確保がさらに困難になることが予想され、賃上げも必要になりそうだ。飲食店経営の陣野真理さん(38)は「時給アップは経営努力で頑張るしかない。スタッフには(賃上げに見合う)スキルを持てるよう経験を積んでもらっている。商品開発などにも携わってもらい、自分らしさを発揮できる魅力ある職場づくりを進めたい」。
 諫早商工会議所が3月、会員の小売業者210社に実施したアンケート(64社が回答)。ゆめタウン開業による自社への影響について、「マイナスの影響を受ける」とした回答は「大きな」「多少なりとも」を合わせて約半数を占めた。「廃業せざるを得ない状況に陥る」が9%、「影響は分からないが不安」も16%だった。
 同商議所は4月、大久保潔重市長らに対し要望書を提出。大型商業施設と商店街との共同イベント実施など県外の事例も念頭に、地元商業者とゆめタウンとの相互利益につながる取り組み推進や共存・協調関係の構築などに向けた協議会設置を求めている。大久保市長は取材に「(イズミは各地への展開の中で)地元商店街との共存共栄のノウハウを持っていると思う。情報を共有しながら、市としてお互いが伸びていく手伝いをしたい」と話した。

© 株式会社長崎新聞社