江戸期の交流、美術からたどる 企画展「描かれた朝鮮通信使」 福岡で26日まで

「描かれた朝鮮通信使」の展示と尹芝惠准教授=福岡市、西南学院大学博物館

 企画展「描かれた朝鮮通信使」が、福岡市の西南学院大学博物館で開かれている。同大国際文化学部の尹芝惠(ユンジへ)准教授が、江戸時代に日本と朝鮮半島を往来した外交使節「朝鮮通信使」を描いた美術を手がかりとした研究の一端を展示。通信使の応接に尽力した対馬藩の儒学者雨森(あめのもり)芳洲(ほうしゅう)を紹介したパネル、芳洲と交流を深めた通信使の書記官申維翰(シンユハン)が道中を記録した「海游録」の復刻本、通信使の行列を描いた絵画の写真など資料20点が並ぶ。26日まで。
 特に貴重なのが、通信使の船や唐人を描いた江戸時代の絵皿やふすま絵。福岡県大牟田市のギャラリーの所蔵品を、尹准教授が調査した。当時「唐人」とは中国人だけでなく朝鮮人も指す言葉で、絵柄からは江戸時代の日本人が持っていた「外国人」のイメージがうかがえるという。通信使の姿は沿道の人々に強烈なインパクトを残し、絵画だけでなく、通信使を模した人形などの民芸品としても伝わっている。そうした品も展示されている。
 尹准教授は韓国の蔚山(ウルサン)出身。浮世絵の美人画に魅せられ、1997年に来日し研究する中で、通信使を描いた絵画に出合った。「韓国ならば通信使のうち高価な服を着た最も身分の高い人物に注目するだろうが、日本の絵画では身分こそ低いものの華やかな楽士たちに目を向けている」。そうした日韓のまなざしや文化の違いに興味を引かれ、研究を続けてきた。
 「通信使は外交・政治のための使者であると同時に、文化交流を担った存在でもあった」。さまざまな葛藤を抱えてきた日本と韓国だが、今日でもK-POPなど文化を通して韓国に興味を持つ人が多くいるように、「相手の国を理解するには文化的な交流が重要ということを、通信使をテーマにした美術は気づかせてくれる」と、尹准教授。日曜休館。入場無料。

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