今や絶滅危惧種「コンドームの自販機」 売れているの? 設置に許可はいるの? 金沢に残る薬局を訪ねると…

昭和の時代、薬局の入り口付近などによく設置されていた「コンドームの自動販売機」いまやその姿を目にすることはめっきり減ったと感じている方は多いのではないでしょうか。

北陸随一の繁華街・金沢市片町から徒歩で10分ほどの距離にある金沢市千日町で、いまなおコンドームの自動販売機を設置し販売しているホンダ薬局。店の建物の壁に沿うような形で自動販売機が置かれています。

金沢らしい風景ともいえる用水が流れる通りにたたずんでいます。

自動販売機の様子を見ると、電源が入っていてまだ現役のようです。

薬局を訪ねると対応をしてくれた本多達夫社長。薬剤師歴は60年近くになる大ベテランです。

ホンダ薬局は、もともと金沢市東山に店を構えていて、およそ20年前に今の場所に移転をしましたが、最初の店ですでに自動販売機は設置していたということです。ただ、設置の時期ははっきり覚えていないそうです。

ホンダ薬局・本多達夫社長「ここをするとき(今の店に移転するとき)に、角の地面が寂しいなと。じゃあ“アレ”でも移すか、こっちへ。それが動機かと」

業者に自動販売機を移してもらったのですが、その際に機械が不調になってしまい、店の移転を機に新しく設置をし直したということです。

昔は自動販売機でコンドームは売れていたそうですが、今は薬局にとっても存在感は薄くなってしまったようです。

ホンダ薬局・本多達夫社長「(売り上げは)ほとんど忘れるくらい。『電気ついとって、お金が入らんし出てこんし買えん』ってなことを言われたケースが1回あった。お客さん堂々と言いに来られてびっくりした」

最近では、年間で60個ほど売れていると話す本多社長ですが、儲けになるような売り上げではありません。管理も業者に任せていて、年に2~3回商品の補充に来るそうです。

避妊具であるコンドームとなると、自動販売機の設置基準があるのではないかと思われがちですが、実際にはありません。

石川県薬事衛生課によりますと、以前は都道府県によっては条例で設置について「学校の近くには置かない」「夜間のみの販売」などの規制を設けていました。

ですが、1995年7月から施行された法律により、全国一律で設置については届け出が不要になりました。ただ、お店がこぞって「自動販売機を設置しよう」という気持ちになるような風潮ではすでになかったようです。

ホンダ薬局・本多達夫社長「コンビニでも平気で、難しい顔せんでも、照れくさいような顔せんでも買える時代に変わってきたなぁ。」

本多社長に外に置いてある自動販売機を紹介してもらいましたが、ディスプレイ部分にはクモの巣が…

これから猛暑を迎えますが、地面にも近いところでずっと置いてあるとアスファルトの熱などでコンドームがダメになってしまうのではという疑問をぶつけると、その点は本多社長、自信を持って答えました。

ホンダ薬局・本多達夫社長「ないです。それはない。一度もない。(熱には強い?)強いでしょう」

そして、子どものころにやってみた“実験”を通して、コンドームはすぐれモノだと感じたと話します。

ホンダ薬局・本多達夫社長「昔、一升瓶で何本ぐらい水が入るかやったことある。いたずらして。あっという間に1本分とっとっとっとっ、と全部入った。(子どものころどうやってコンドームを手に入れた?)店にある。薬局やってたから」

今や利益にはならないコンドームの自動販売機。新規の設置はまずなく、着実に「絶滅」へと向かっているようですが、本多社長は引き続き置いておく考えです。

ホンダ薬局・本多達夫社長「めんどくさくないから、全部(業者が)やってくれるから置き続けます」

「明るい家族計画」のフレーズとともに、どこかギラギラした昭和を連想させる。

「遺産」と呼ぶには大げさでまだ早いかもしれませんが、コンドームの自動販売機はちょっとした哀愁を漂わせながら街に立っています。

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