真岡鉄道に立ち入り検査 国交省関東運輸局 飲酒基準超えSL運転の問題で

真岡鉄道のSL

 栃木県真岡鉄道(真岡市)で4月、男性運転士(53)らが運行前のアルコール検査で基準を超える数値が出たのに社内規定に違反しSLに乗務していた問題で、国土交通省関東運輸局は19日、鉄道事業法に基づき同社に立ち入り検査を実施した。調査結果を基に、行政指導などを含めて今後の対応を検討する。一方、同社は同日、社内の委員会を開き、運転士を含む3人の懲戒処分案を固めた。24日に正式決定する。

 運輸局によると、18日に同社から社内調査の報告があったことを受け、立ち入り検査した。安全指導課の職員2人が午前10時から午後4時ごろにかけて、関係者への聞き取りの他、アルコール検査の数値を記入した点呼簿やアルコール検査器の履歴などを確認した。

 今後、法的拘束力がある行政処分や、処分には至らない行政指導などを含め対応を検討する。必要に応じて追加の検査も行う。

 同社によると、処分案を決める社員向上対策委員会では課長級以上の5人が協議。社員への聞き取り調査を踏まえ、運転士と男性運転指令(43)、安全統括管理者の男性事業部長(53)の懲戒処分案を決めた。上野公男(うえのきみお)専務取締役は「24日に社長である真岡市長に報告し決裁を得る。内容を明らかにすることは控えたい」とした。

 同社によると、4月20日朝、運転士は出社後、運転指令とペアでアルコール検査を実施。検査器による1度目と数分後の2度目の検査で、いずれも同社の基準(呼気1リットル当たり0.05ミリリットル)を超える数値が出た。その後、本来は実施する3回目を行わず、運転指令が目視で臭い、顔色などの確認のみで問題がないと判断。点呼簿に「0.00ミリグラム」と虚偽の数値を記載した。

 運転士はそのままSLに乗車し、下館-茂木駅間を往復した。運転士は調査に「前夜午後8時までに350ミリリットルの缶ビール4本を飲んだ」と説明。基準超えの数値は検査前に洗口液を使用したためとしている。

 同社は再発防止策として、3人以上での検査実施や、顔写真などで検査した記録を残せるアルコール検査器の導入、運転の12時間前からの飲酒の禁止を検討している。

© 株式会社下野新聞社