歴代1位『ONE PIECE』から最速突破『鬼滅』まで…国民的作品の証「発行部数1億部超え」漫画をたどる

photoAC

今や日本を語るうえで欠かせない文化となった漫画。繊細な絵柄に1ページ先の展開まで読めないストーリー、絶妙なコマ割りなど日本の漫画はクオリティが高く、世界中のファンから絶大な支持を得ている。その一方、漫画界は非常にシビアで、人気作家になれる人はごく一握り。作品は発行部数100万部を超えれば大ヒットと言えるが、まずそこまでいくことが難しい世界だ。

そんな中、発行部数1億部を超える「モンスター漫画」も複数存在しており、2024年5月には板垣恵介氏の『刃牙』がシリーズ累計1億部を突破した。1991年に『グラップラー刃牙』の連載が始まって以来、33年の月日を経て、ついに快挙を成し遂げたのである。今回は、そんな発行部数1億部超えのモンスター漫画を辿っていこう。

■圧倒的に少年漫画が多い!日本の1億部超え漫画

2024年現在、発行部数1位を独走しているのは、1997年に連載が始まった尾田栄一郎氏の漫画『ONE PIECE』の全世界では5億1000万部。世界60の国と地域で流通しており、国内で4億部以上、海外だけでも1億部以上の発行部数を叩き出すモンスターぶりである。

現在は108巻まで刊行されているが、2005年発売の36巻で『週刊少年ジャンプ』の漫画史上最速(当時)の1億部を突破。36巻といえば、ニコ・ロビンやCP9、古代兵器プルトンのエピソードが描かれた「ウォーターセブン編」の佳境に差し掛かったあたりだ。

もう一つ、『ONE PIECE』で忘れてはいけないのが初版発行部数の記録である。2010年発売の57巻で日本出版史上最高部数300万部を記録するも、2年後に発売した67巻で405万部を叩き出し、自己記録を更新しているのだ。物語はこれからクライマックスに突入していくため、ますます数字が伸びていく可能性が高い。この記録を抜く漫画は、そうそう出てこないだろう。

また、シリーズ累計1億部超え作品の中には、歴史が古い作品も多々ある。たとえば、1968年スタートのさいとう・たかを/さいとう・プロダクションによる『ゴルゴ13』と、1970年スタートの藤子・F・不二雄氏の漫画『ドラえもん』だ。『ゴルゴ13』に至っては現在212巻が発売中という長寿漫画であり、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス記録にもなっている。

他には手塚治虫氏の漫画『ブラック・ジャック』『鉄腕アトム』、あだち充氏の漫画『タッチ』などが1億部超えを果たしており、往年の名作がいかに時代を超えて愛され続けているかがわかる。

発行巻数ギネス記録の前保有作品である秋本治氏の漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』も、全201巻(読切含む)と発行巻数が多かった。1976年の連載開始から2016年の完結まで休載することなく『週刊少年ジャンプ』を盛り上げた同作は、完結後にもコンスタントに部数を伸ばし、現在では1億6000部まで数字を伸ばしている。

『ONE PIECE』『こち亀』もそうだが、1億部超え漫画は『週刊少年ジャンプ』の作品が多い。完結したものでは、2億6000万部の鳥山明氏の『ドラゴンボール』や2億5000万部の岸本斉史氏の『NARUTO-ナルト-』など、海外からも圧倒的な支持を得ている超名作が揃い踏みだ。

■社会現象を起こし「全巻買い」が続出した『鬼滅の刃』『SLAM DUNK』

1億部超え作品の中でも注目なのが、社会現象を巻き起こした吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』である。一時期は街に炭治郎と同じ市松模様の子どもたちが溢れ、お年寄りでさえもタイトルを認知するほどの知名度を誇った。

同作の連載は2016年から2020年で、コミックも全23巻と他の作品に比べて短い。にも関わらず、2020年に発売された22巻で1億部を突破している。これは連載開始からわずか4年という『ONE PIECE』をも凌駕する早さで、爆発力を裏付ける超人的記録だ。

一方で、同作のアニメ放送前の発行部数は250〜350万部程度。この数字も十分にヒットと言えるものではあるが、同作の人気に火をつけたのは2019年4月に始まったアニメ放送だったのは間違いない。

アニメ第一期終了後には、2019年に発売された16巻までのシリーズ累計発行部数が1200万部を突破。それから、新刊1巻ごとに2000万部ほど増加して21巻時点で8000万部まで伸び、2020年の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の公開を機に、史上最速で1億部を達成した。当時はメディアでも同作の話題を聞かない日はないほどの人気で、アニメや映画をきっかけに「全巻買い」する人も続出。書店で『鬼滅の刃』の棚がゴッソリ空く光景も珍しくなかった。

その後、23巻で1億2000万部に到達。完結後も勢いは止まらず、2021年にはついに1億5000万部を超えた。

完結後に部数を伸ばした作品でいえば、井上雄彦氏の漫画『SLAM DUNK』も当てはまる。同作が1億部を突破したのは完結後の2004年のこと。その後、突破記念の感謝イベントを行ったことで再び盛大に盛り上がり、2022年の映画『THE FIRST SLAM DUNK』の公開で人気が再熱。こちらも『鬼滅』同様に「全巻買い」を起こしたことが話題となった。

『ドラゴンボール』が42巻、『SLAM DUNK』が31巻ということを考えても、レジェンド漫画は単行本売り上げの爆発力や人気の持続力がずば抜けて高いことがわかる。

連載中のものでは、堀越耕平氏の『僕のヒーローアカデミア』が2024年発売の40巻で1億部を突破した。40巻は現時点での最新刊で、ヴィランとの戦いがいよいよクライマックスに突入し最大の盛り上がりを見せている。完結も近いとされていることから、さらに部数を伸ばしていくだろう。

もちろん、『週刊少年ジャンプ』以外も負けていない。例えば、2億7000万部という驚異の部数を誇り、年齢層を問わず多くのファンを獲得している青山剛昌氏の『名探偵コナン』。『週刊少年サンデー』で現在も連載中だが、未回収の謎も多くまだまだ物語は続きそうだ。

そしてじわじわと部数を伸ばしていったのが、『週刊少年マガジン』で1989年から連載が続いている森川ジョージ氏のボクシング漫画『はじめの一歩』。同作が1億部を突破したのは、2023年発売の138巻と最近のことで、現役を引退しセコンドとなった一歩の新たな活躍が描かれている。

世界から見ても、日本の漫画は飛びぬけて人気が高い。今や文化の一つとなった分野だが、ここまでの成長を遂げたのはすべて、これまで道を切り開いてきた作家たちの想像力と努力の賜物である。

© 株式会社双葉社