店に行列、車道にはみ出る、交通渋滞も…「オーバーツーリズム」へ対策 昨年は719万人が訪れた川越市 「住民の生活の質確保と観光客の受け入れを両立」

観光客が多く訪れる川越市の「一番街」=19日

 埼玉県川越市は、観光客が多く集まり住民の生活に影響が生じる「オーバーツーリズム(観光公害)」への対策として、観光客の滞留スペースの確保や店舗への整理券システム導入費の一部補助などの事業を行う方針を決めた。市は開会中の6月定例市議会に、対策事業費1億1991万円の補正予算案を提案した。川合善明市長は「住民の生活の質の確保と、観光客の受け入れを両立するための対策を講じる」との考えを示す。

 川越市は、オーバーツーリズムの抑止に向けて観光庁が先駆的なモデルとして選定した20地域のうちの一つ。観光客は蔵造りの町並みが残る「一番街」周辺を中心に多く訪れる。

 市によると2023年に同市を訪れた観光客数は719万1千人で、前年度に比べ28%増えた。今年の大型連休中(10日間)の調査では、一番街エリアに21万6千人が訪れ、前年の13万1700人(9日間)を上回っている。

 一方で観光客の一部が歩道上に行列を作ったり、歩行中に車道にはみ出したりするケースが見られる。車で訪れた人が駐車場を探すことで、交通渋滞も生じるという。

 道路混雑への対応として、市は観光客の滞留スペースの確保を目指し、周辺の空き地を活用できるかどうかを調査し実証実験を行う。担当者は「行列で待つ人や歩道上で食べ歩きをしている人に過ごしてもらえるようなスペースを、随所に増やしたい」と説明する。整理券システムの導入では、店舗前の歩道上に行列が発生する飲食店などに対し、購入費の一部を補助する方針だ。

 市は駐車場の混雑や空きの情報をインターネット上で発信するための環境整備や、ごみの量を端末から確認できるスマートごみ箱の設置への補助なども見据える。

 観光庁が選定した先駆モデル地域には京都市や神奈川県箱根町が選定され、埼玉では川越市のみとなっている。

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