【識者推奨|大岩Jのパリ五輪メンバー】OAは遠藤と谷口が現実的。町田を招集できれば…、キーマンは“Mr.オールマイティ”佐野

7月末にパリ・オリンピックが開幕する。4年に一度の大舞台に挑むメンバーはどんな顔ぶれになるか。ここでは、サッカーライターの河治良幸氏が推奨するU-23日本代表の18人を紹介する。

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目標であるメダル獲得のためには2週間で6試合をこなしていくタフさが求められる。大岩剛監督が招集したことのあるタレントをメインに、6月のA代表に招集された鈴木唯人と事実上の辞退を公表している久保建英は外して、スペシャルとポリバレントのバランスを考えながら組んでみた。

特に個人で違いを生み出せる選手の組み込みは、18人という構成を考えると非常に難しい。そこでキーマンになるのが佐野航大だ。

最終選考を兼ねた、昨年のU-20W杯メンバーであり、6月のアメリカ遠征で”大岩ジャパン”に初招集されたが、中盤、サイド、前線と幅広いポジションをこなせることだ。3バックにシステムチェンジしても、左ウイングバックなどでもプレーできる。さらにセットプレーのキッカーも担えるので、大岩監督が交代策を打ちやすい。さらに局面で決定的な仕事もこなせる「Mr.オールマイティ」とでも呼ぶべき選手だ。

佐野をひとり入れることで、本来1ポジションで2人以上は必要なポジションをほぼ埋めることができる。

斉藤光毅は左ウイング、荒木遼太郎はインサイドハーフ、山田楓喜は右ウイングでスペシャリティを発揮する選手だ。もちろん彼らもほかのポジションで起用することは可能だが、佐野がいれば、そうしたカバーリングは彼に任せればいい。彼もA代表を狙う段階では得意のポジションを極めていく必要があるが、五輪代表では究極的なポリバレントであることが、最大のストロングになる。

その前提で、全てのポジションを見ていくと、GKは鈴木彩艶と小久保玲央ブライアンでほぼ決まりだろう。どちらがファーストチョイスになるかは難しいが、世界の戦いを想定して、ベルギーのトップカテゴリーでスタメンを張る鈴木か。ただ、接近した競争になるのは間違いない。

バックアップ4人のGK枠は、順当なら野澤大志ブランドンだが、FC東京はフィールドで、松木玖生と荒木が選ばれた場合に、野澤が3人目になってしまうので、おそらく難しいという予想で、山田大樹を想定している。

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オーバーエイジは現実的に、移籍の可能性が低い遠藤航と谷口彰悟の2人はかなり濃厚とみる。残るひとりで、移籍先によっては難しそうだが、もし町田浩樹を招集できれば、センターバックと左サイドバックの両ポジションで計算が立つ。

右サイドバックはU-23アジア杯で飛躍的に評価を高めた関根大輝と復調中の半田陸のハイレベルな競争が展開されそうだ。それと同時に、半田は左サイドバックのセカンドチョイスにもなれる。

センターバックはオーバーエイジの谷口と町田。それに左右のセンターバックを高水準にこなし、セットプレーの高さもある高井幸大が、パリ五輪世代では唯一の招集となるか。

左サイドバックはバングーナガンデ佳史扶がアメリカ遠征で途中離脱したこともあり、U-23アジア杯でも活躍した大畑歩夢が生き残りそうだ。このポジションのスペシャリストは大畑だけだが、左利きの町田に加えて、左右ポリバレントの半田、さらには佐野がカバーできる。

最終ラインはA代表なら8人で回すところを6人でカバーすることになるが、佐野や中盤のオーバーエイジで想定する遠藤が、センターバック、右サイドバックも可能とみる。バックアップメンバーは、難しいが内野貴史を想定する。

中盤は藤田譲瑠チマがこの世代の中心だが、オーバーエイジで遠藤が入る場合に、アンカーに加えてインサイドハーフでも起用されそうだ。

インサイドハーフは2列目の10番タイプとボランチもこなす8番タイプの組み合わせが多い。相手との関係では3ボランチ気味のオーガナイズも選択肢になるが、FC東京のコンビでもある荒木と松木をセットで生かすプランを考えた。佐野はここでも重宝しそうだ。ここまで”大岩ジャパン”を引っ張ってきた山本理仁を外すのは心苦しいが、頼れるバックアップとなるか。

前線は斉藤と左右ウイングをこなせる三戸舜介、左利きでセットプレーのキッカーを担える山田楓、センターフォワードはエースの細谷真大と、中央、サイドをこなせる藤尾翔太に。

ウイングで抜群の機動力を誇る平河悠は三戸、斉藤との兼ね合いでバックアップにしたが、攻守の貢献度を想定して、大岩監督は選ぶかもしれない。本当は後藤啓介のような秘密兵器的な大型FWを加えたいが、18人枠を考えると厳しいか。ただ、そうしたサプライズがあるとすれば前線だろう。

取材・文●河治良幸

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