臼井麗香は「心強い」 片山晋呉が意識し続けたキャディとしての“伝え方”「ダメは一度も…」 

初タッグの臼井麗香(左)と片山晋呉(撮影:上山敬太)

<アース・モンダミンカップ 初日◇20日◇カメリアヒルズカントリークラブ(千葉県)◇6688ヤード・パー72>

男子ツアー通算31勝を誇る片山晋呉をキャディに起用し戦う臼井麗香は、過去5度出場し4度の予選落ちを味わっている“苦手大会”で、これまでにはなかった安心感を覚えながらプレーすることができた。何度も相談を重ねながら、3アンダーの上々発進。これには5度の賞金王に輝いてきた片山も、「よかった~、いいプレーをしてくれて」とホッと一安心だ。

組について歩いていると、片山のこんな声が聞こえてくる。『あのパットは20回打って、入るのは1、2回。それ以上に3パットもしちゃうから』。3番で下りを2パットのパーでしのいだ後のことだ。片山は、「いっぱい話せてよかった。僕なりにうまく転がるようにしたつもりだけど、本人はどう思っているのか。余計なのかどうなのか、こればっかりは分からない」と明るく話すが、この18ホールでかけ続けてきた言葉に“工夫”を施した。

「ゴルフは僕のほうが知ってるから、聞かれた時には“こうしたほうがいいよ”とは言うけど、伝え方が大事。『左はダメ』ではなくて、『右が広いし右から行こう』って言われると選手は安心する。“ダメ”ということは一度も言ってないですね」

この“言われ方”は、片山自身がコースでキャディに求めていたもの。それだけに強く意識した部分でもある。そして臼井も、それにより心地よくラウンドすることができた。

「ポジティブなことしか言われないです。『(ティショットで)立ちづらい』と言うと、『(フェアウェイをヒットするのは)じゃんけんくらいの確率だから気にしないで』とか言ってくれて。うまい人なら『絶対にフェアウェイに置いて』とか言うのかなと思っていたけど、晋呉さんはコースを広く使ってアドバイスしてくれるので回りやすかったです」

この日の最終ホールとなった18番パー5は、3打目を“お先に”の距離につけバーディで締めくくったのだが、ここでもベテランの味が出た。残り55ヤードのこの3打目で58度のウェッジを握った臼井の狙いは「キャリーで50ヤード」。しかし、片山は「もうちょっと行ってくれ。(キャリー)53~54ヤードで」と注文し、これがピタリとついた。

「こういうことを分かってくれるから僕もすごくよかった。思わず『ありがとう』って言っちゃいましたよ。うれしかったなぁ。きょう何回ありがとうって言ったかな」。この場面を振り返る時の片山は、自分のプレー以上によろこんでいるようにも見えた。「(キャディは)すごくおもしろい。好きなはずなんです、僕は。しかも向いていると思う、なんなら」。口も滑らかだ。

グータッチを重ねながらの18ホール。臼井には「晋呉さんがアドバイスをくれるので、それに応えなくちゃという緊張感はあります」という気持ちも“ちょっぴり”あるが、その存在はやはり「心強い」。4位で最終日を迎えながら、最終日に「72」と伸ばせず優勝争いから脱落した先週は、アイアンの感触がよくなかったというが、それも上向き。片山も、「いいバーディも取ってるし、ゴルフの内容はすごくいい」と、そのプレーに太鼓判を押す。

「楽しみもあるけど、ここの怖さも知っている。でも安心感がありますね」(臼井)。何度も苦い経験をしてきたコースを、あすからも25歳の黄金世代と51歳の元賞金王が力を合わせ攻略していく。(文・間宮輝憲)

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