一芸は高い危機察知能力。静岡学園の2年生10番・山縣優翔が全国の舞台に闘志を燃やす「ゴールに絡める選手になれるように」

静岡学園の栄光の背番号10。かつて大島僚太(川崎フロンターレ)、旗手怜央(セルティック)、名古新太郎、松村優太(いずれも鹿島アントラーズ)、古川陽介(ジュビロ磐田)ら技巧派かつ一芸に秀でた選手たちが背負ってきたナンバーを、今年は2年生が背負っている。

ボランチで全体をコントロールするMF山縣優翔は、これまでの10番の系譜を継いでテクニックに優れ、広い視野からテンポの良いパスと、相手の急所をえぐるパスを使い分けるだけではなく、一芸も持っている。

彼の一芸とは、高い危機察知能力だ。これまでの10番は攻撃に特色を持ち、派手なプレーが印象的だが、山縣はどちらかと言うと玄人好みする選手だ。

「常に周りの状況がどうなっているかを意識していて、そのうえで自分がどういうプレー選択をすれば、この状況がどう変わるかを考えています」

幼さが残る顔立ちだが、頭の中は高度な駆け引きをするために常にフル回転させ、冷静に全体を見つめている。昨年から1年生とは思えない落ち着いたプレーを見せてきたが、今年は10番の責任を背負うことで、プレーに積極性とメッセージ性が滲み出るようになった。

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インターハイ静岡県予選決勝の藤枝東戦。立ち上がりはチーム全体のテンポが良かったことを活かして、山縣は積極的に前に出るプレーを選択した。しかし、徐々に流れが藤枝東に傾き出すと、「全体の守備の距離感が悪くなったので、僕が後ろに下がってスペースを埋めたり、セカンドボールを拾ったりすることでバランスを取るようにしました」と、ポジションを落として相手の攻撃の芽を摘むプレーを徹底。彼のこうした機転もあって、前半を無失点で凌ぐことができた。

後半は立ち上がりに先制を許すが、これで今度は静岡学園に攻撃のスイッチが入ると、山縣は前半の序盤のようなプレーに切り替えて、攻撃陣をサポート。64分にCB岩田琉唯のヘッドで同点に追いついた静岡学園は、69分にはFW大木悠羽のゴールでひっくり返した。

1点のリードを得ると、山縣はポジションを再び落として全体のバランスを取るプレーを選択。試合の流れに即した振る舞いを最後まで続けて、2-1の勝利と2年連続9度目のインターハイ出場に大きく貢献した。

「バランスを取る判断は良かったと思うのですが、やっぱり10番を背負う以上、もっとゴールに直接絡むプレーを増やしていかないといけないと思っています。これまでのプレミアリーグWESTもインターハイ予選も満足の行く結果を残していないので、全国ではきっちりとゴールに絡める選手になれるように頑張っていきたいと思います」

気が利く選手がゆえの、『気を利かせ過ぎてしまう』という部分を改善し、より味方にとって頼もしく、相手にとって攻守において嫌がられるような存在になるべく、テクニック集団の2年生10番は全国大会に向けて闘志を燃やす。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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