【真鶴 学びスポットレポ】岩牡蠣「鶴宝」-富士山の地下水と相模湾の恵みで湘南唯一の岩牡蠣を養殖中!

湘南エリアは、最大水深 2,000mにも至る深海を含んだ多様な地形を有する相模湾に面しています。相模湾は、幕末期にはすでに定置網が置かれ、首都圏の食の基盤を支えてきました。魚種の豊かさを誇るこの湾は、伊豆諸島の海底山脈を乗り越え、流れ込んでくる黒潮や、富士山、箱根、丹沢、大山などの山々から、地下水や河川を通じて育み運ばれる栄養分に支えられています。

そんな相模湾に新しいブランドの岩牡蠣が誕生しました。真鶴町が2015年から島根県海士町の協力を得て試験養殖を始め、清浄海域である相模湾の沖合でロープを吊し、100%外洋養殖という珍しい手法で養殖されている岩牡蠣「鶴宝」です。

画像出典:岩沖岩牡蠣養殖事業推進協議会

通常、1年前後で出荷できる真牡蠣に比べ、生息海域や生殖活動の違いなどから3年間という長い養殖期間が必要な岩牡蠣。2021年からついに市場への出荷が始まり、昨年の今ごろには西湘地域の飲食店や地域のスーパーなどでも見かけるようになっていました。

出荷前の減菌槽に浸かっている「鶴宝」の様子です。

画像出典:岩沖岩牡蠣養殖事業推進協議会

「鶴宝」は、岩牡蠣種特有のクリーミーな濃厚さが控えめで、食べやすく、クリーンできれいな真鶴の海のようだと、西湘地域で大評判。しかし、今年の出荷は見送られたそうです。その理由について、真鶴町の担当職員の方にお話を伺ってきました。

画像出典:湘南人

「種苗が、主にクロダイによる食害にあい、今年出荷できるサイズの牡蠣が揃わなかったのです。」

調べてみると、クロダイによる漁業被害は、海苔、アサリ、牡蠣など、日本各地で数多く報告されていました。クロダイは、チヌとも呼ばれ、釣り人に人気の高い魚種ですが、養殖物の食害という現象も同時に起こっているようです。

また、牡蠣養殖には、他にも課題があります。牡蠣殻に付着するフジツボ類。適切な時期に掻き落とさないと、牡蠣の餌である植物プランクトンを取られたり、牡蠣が窒息してしまうこともあるそうです。さらに「鶴宝」は、生活排水の影響がない岩大橋の先にある清浄な外洋に養殖ロープを設置しているので、台風や波浪時には、ロープを緩め、波の影響を少なくする対策を地元の漁師さんたちが行っています。

植物プランクトンは海面上に多く発生するので、海流や海水温を見て、牡蠣が食べやすい位置にロープを引き上げることも。牡蠣は、天然物より養殖物の方が美味しいと個人的に感じられる食材ですが、それはこのような手作業が行われているからなのかもしれません。

今回の取材で一番感動したのは、岩海岸から養殖海域までホースを這わせて海水を採取し、”清浄海水掛け流し”で減菌処理されている点です。

このホースで施設まで海水を送っています。

画像出典:湘南人

生食用の牡蠣には出荷前の滅菌処理が必要で、各種の方法があります。牡蠣は1日に約300ℓ/個もの海水をろ過しているので、滅菌処理に使用する水分の質は当然、味覚にも影響します。生まれ育った海域の海水で浄化される岩牡蠣「鶴宝」。クリーンで自然な味わいの秘密は、ここにもありそうです。

画像出典:湘南人

私たちが美味しくて安全な生牡蠣を食べられる背景には、自然界の循環する仕組みと、多くの人たちの仕事の成果がありました。来年の出荷が楽しみです。

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