迷惑行為はゴメン…だけど外国人に来てほしい!  観光客倍増で”富士山に登る階段”を抱える街の悩み【静岡発】

富士山に登るように見える階段がSNSで有名になり、静岡県富士市に外国人観光客が殺到した。タクシーやコンビニ店の売り上げが増加する一方で、周辺住民は迷惑行為に困惑している。市は対策を急ぐとともに、外国人観光客の増加を市全体の観光活性化につなげようと頭をひねる。

SNSで話題 外国人客が殺到

富士山に登っていくような階段。ここは富士市を走る国道にある”富士山夢の大橋”だ。

2023年の年末頃からSNSなどで話題となり、富士山の撮影スポットとして外国人観光客が大勢訪れるようになった。

ゴールデンウイークの後も連日も様々な国から来た外国人観光客が富士山の撮影を楽しんでいて、観光客は「上海(から来た)。中国と日本のSNS(で知った)。こちらはすごく富士山が大きい」と話す。

迷惑行為に住民困惑

しかし、中には迷惑行為をする観光客もいる。

駐車禁止の場所に車を停める駐車違反のほか、階段を上った所にある橋では歩道から車道を横切って中央分離帯に入る人もいる。富士山の眺めがよいことから、中央分離帯で写真撮影をするためだ。

また、騒音やゴミのポイ捨てもあり、近所の住民は困惑している。

住民:
(外国語だけど)「写真を撮っているので通ると邪魔になる」と言われているのだと思う。だからあの橋はもう散歩に行けなくなりました

観光客倍増…タクシー運転手笑顔

迷惑行為が問題化する一方で観光客が増えることで経済効果も生まれている。

東海道新幹線・新富士駅の観光案内所には、大勢の外国人観光客が訪れている。携帯電話で「富士山夢の大橋」の画像を見せながら行き方を尋ねていた。

富士山観光交流ビューロー・片瀬恵梨さんは「こちらの案内所に立ち寄る方が増え、『ドリームブリッジ(夢の大橋)に行きたい』という問い合わせがたくさんあるようになった」と話す。

富士山観光交流ビューローによると、観光客の増加はレンタサイクルの貸し出しや荷物の預かり増加につながっているそうだ。

担当者は「細かい数字は分かりませんが、感覚的には1カ月の集計で2カ月分、倍くらいには増えている」と増加を実感している。

タクシーやレンタカーの利用も増加している。

タクシー運転手は「(外国人観光客が見せる)スマホの写真や日本語で『夢の大橋』とわかるから、(対応で)それほど困ることはない」「乗せていくお客さんが増えたから、(我々にとっても)1つのメリットだね」と表情が緩む。

コンビニ店も経済効果

こうした経済効果は近隣のコンビニエンスストアにも波及している。

橋の近くにあるコンビニ店のオーナー・山中範幸さんは「ご飯を買いに来たり、トイレを使ったりという形で利用される方が多いので、正直、土日で暇だった部分が忙しくなったので店として考えればメリットは大きい」と話す。

しかし、迷惑行為はコンビニでも見られ、買い物もせず駐車場だけ利用する人もいるそうだ。

前出の山中さんは「富士山がきれいに見える場所なので、(夢の大橋が)もっとより良い観光地になってくれたら」と期待している。

市や国が迷惑行為対策

迷惑行為の解決と経済効果への期待に向け、富士市は対策に乗り出した。

市は目の前の問題を解決するため、車の歩道への乗り上げを防ぐポールを設置。さらに車17台分の駐車場を整備し、そこに仮設トイレを設けた。

さらに交通誘導員も2人を配置し、駐車場の案内や交通マナーを呼びかけている。

交通誘導員は当日の雲の様子で、橋から富士山が望めるかどうかなども案内する。

そして、国道を管理する国にも要望し、外国人観光客が富士山の写真撮影のために立ち入っていた中央分離帯に入れなくなるようフェンスを設置してもらった。

再度現場を訪れてみると、高さ1.8mの金属製のフェンスが中央分離帯の周囲 計400mにわたり設置されていた。

「他の場所にも回遊して」

住民の不安解消が先決だが、市は「夢の大橋を軸に市全体への回遊を促し、経済効果を波及させたい」と考えている。

富士市交流観光課・松村岳典 課長:
せっかくそれだけの外国人が毎日、夢の大橋を訪れるのだとしたら、市内の商店街などに回遊できる仕組みやもっと富士山が見える市内の他の場所をPRして、そちらにも行ってもらう仕組みをみんなで考えていけたらと思っている

思わぬ場所が観光地化するいま、住民の理解を得ながら観光資源をPRし経済効果を高める工夫が求められている。

(テレビ静岡)

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