【6月22日付編集日記】見た目変わっても

 多くの樹木は幹の一番外側に新しい細胞があり、その部分だけが活発に活動している。内側の大部分は死んだ組織でできていて、この固い部分が高く伸びていく木を支える背骨の役目を果たす。1年ごとに年輪を重ねながら、やがて大木になっていく

 ▼この生と死を何千年も繰り返している古木があることを思うと、気が遠くなる。あっという間に過ぎ去った青年期を惜しみ、そろそろ老年期かと感慨にひたりがちな人間の一生とは比べようもない。毎年、青々とした葉や美しい花をつける樹木の生命力がまぶしく映る

 ▼樹木の残念なニュースが続いている。大玉村の国指定天然記念物「馬場桜」が、ほとんど枯死した状態にあることが分かったのに続き、二本松市の「合戦場のしだれ桜」が、非常に厳しい状態と診断された

 ▼数年前の満開時に目にしたときは、樹勢が少し衰えてはいたものの、きれいな花をつけ訪れた人たちを迎えていた。三春滝桜の孫桜ともいわれているだけあって堂々とした姿を見せてくれた

 ▼今後3年間で集中的に樹勢を回復させる対策を講じていくという。枯れ枝の剪定(せんてい)などで見た目が少し変わったとしても、強い生命力で輝きを取り戻すことを願ってやまない。

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