「四阿屋神社の御田舞」後世へ 鳥栖市蔵上町 所作や衣装 保存会がDVDに

四阿屋神社の御田舞を後世に継承しようとDVDを作成した(右から)保存会の音成克己会長と篠原正雄さん=鳥栖市役所

 鳥栖市蔵上町に伝わる「四阿屋(あずまや)神社の御田舞(おんだまい)」を後世に伝えようと、蔵上町区御田舞保存会(32人)が祭りの所作や衣装を記録したDVDを作成した。記憶を基に毎年奉納してきたが、コロナ禍の中断で正しく継承できるか危機感を抱いたといい、「保存継承のための教材になれば」と活用を期待する。

 四阿屋神社の御田舞は田作りを芸能化した豊作祈願の舞で、始まりは1350年前、天智天皇の頃とされる。惣社の四阿屋神社で奉納されていたが、現在は毎年10月20日ごろ、蔵上老松宮で奉納。県重要無形民俗文化財に指定されている。

 鍬(くわ)を持つ田打(たうち)、花笠をかぶった田童(とうど)、種蒔(たねまき)、代踏(しろふみ)などの役を子どもと若者30人で舞い、師匠と呼ばれる熟練者が振り付けなどを指導する。しかし、コロナ禍で3年中断し、保存会会長で蔵上町区長の音成克己さん(75)は「記憶の食い違いもあるし、細かい動作まで正しく継承できるか危機感を感じた」という。明治安田クオリティオブライフ文化財団の助成金50万円を費用の一部に充て、DVDを作成することにした。

 撮影を前に、各役割の師匠が話し合って正しい所作を確認。振り付け練習をはじめ祭りで使う花がさ作り、衣装や着付け、みそ田楽作りなどの様子を撮影した。昨年10月22日、4年ぶりに奉納された祭りの様子も収録した。DVDは着付け、振り付け、道具作りなどを記録した「保存編」、奉納の様子を収めた「総集編」を作成した。

 師匠の一人・篠原正雄さん(71)は「伝統芸能は、ハード面の助成はあるが、後世に伝えていくためのソフト面の助成はなかなか見つからない」と継承の難しさを語る。総集編のDVDはまちづくり推進センターなどに配布しており、希望者には実費で配布する。問い合わせは蔵上公民館、電話0942(83)0766。(樋渡光憲)

御田舞の振り付けを収録する保存会のメンバー=昨年7月

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