ジダン、アンリ、ヴィエラ…2000年大会を制したフランス黄金世代はなにが凄かったのか【EURO】

EURO2024の優勝候補筆頭との呼び声が高いフランス代表。キリアン・エムバペやアントワーヌ・グリーズマン、ウィリアン・サリバ、テオ・エルナンデズら多士済々の精鋭を擁し、世界最高のタレント軍団とも称される。

もっとも、歴代のフランス代表には現在の顔ぶれに勝るとも劣らない優秀な選手が集ったチームが存在する。1998年から2000年にかけて、同国史上初となるメジャートーナメント2連覇の快挙をやってのけた世代だ。

ジネディーヌ・ジダンを筆頭に、ティエリ・アンリやパトリック・ヴィエラら後世に語り継がれる複数のレジェンドが共存し、ファンを魅了したあの黄金世代の記憶を紐解きたい。

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1998年のワールドカップ(W杯)とEURO2000を続けて制し、メジャー大会2連覇の離れ業を演じたフランスを誰よりも強く、美しく象徴していたフットボーラーはジネディーヌ・ジダンをおいて他にはいない。72年生まれのジダンを中核として、68年生まれのディディエ・デシャンら少し上の世代と、77年生まれのティエリ・アンリを擁する少し下の世代が融合した、息の長いあの黄金世代に絶対不可欠だったのが、不世出とも表現できる攻撃的MFのジダンであった。

ジダン抜きには語れないこの黄金期は、その頭に始まり、その頭に終わる。フランスがW杯初優勝を遂げた98年大会の決勝で、27分の先制点と46分の追加点は、10番を背負うジダンがどちらもヘディングで決めたものだ。将軍とも称されたフランス代表のこのシンボルは、自身の代表ラストマッチとなる8年後の06年W杯決勝で、延長後半の110分に相手選手への頭突きで一発退場を命じられ、自ら黄金時代の幕を引いている。

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ジダンの前方で敵の脅威となっていたのは、どちらも77年生まれの点取り屋だ。延長戦までもつれたEURO2000の決勝でイタリアからゴールデンゴールを奪い、01-02シーズンのセリエAでは得点王に輝くダビド・トレゼゲと、プレミアリーグでトップスコアラー4度というアンリが双璧を成していた。圧倒的なスピード、柔軟な技術、ゴールセンスという三拍子を揃えた後者は、A代表通算51ゴールを記録し、22年12月まで歴代最多スコアラーに君臨しつづけた。

「ジダンをマークするのは、いつだって俺の役割だった。試合の前夜は眠れなかった」

そう述懐しているのは、06年W杯決勝でフランスを破ったイタリア代表のジェンナーロ・ガットゥーゾだが、ジダンだけを警戒していればよかったわけではない。68年生まれのユーリ・ジョルカエフや73年生まれのロベール・ピレス、74年生まれのシルバン・ヴィルトールが将軍とデュオを組み、あるいはワイドなポジションから決定機を創り出した。

ジダンを後方で支えるボランチも人材に事欠かなかった。デシャンを筆頭に、どちらも70年生まれのクリスティアン・カランブーやエマニュエル・プチ、76年生まれのパトリック・ヴィエラが後に続き、レアル・マドリーでもジダンの名黒子役を務めることになる73年生まれのクロード・マケレレが脚光を浴びるのは、EURO2000の後だった。
ジダンを欠くフランスの黄金時代は想像できないが、その一枚看板であれだけの栄光が実現したわけではない。

CBに65年生まれのロラン・ブランと68年生まれのマルセル・デサイー、右SBに72年生まれのリリアン・テュラム、左SBに69年生まれのビセンテ・リザラズという編成のDFラインは、71年生まれのファビアン・バルテズという正守護神を含め、世界最高の守備ユニットとも称された。

クラブレベルではフランス人のアーセン・ヴェンゲルに率いられたアーセナルが、レ・ブルー(フランス代表)の4人を主力として01-02シーズンと03-04シーズンのプレミアリーグを制している。アンリ、ピレス、ヴィルトール、ヴィエラから成るその4人は「フレンチ・コネクション」の異名を取った。

W杯では98年大会以降の7大会中、フランスはどの国よりも多い4大会で決勝に駒を進めている。その礎を築いたのが、ジダンを強烈な象徴とするこの黄金世代だったのだ。

※ワールドサッカーダイジェスト5月2日号の記事を加筆・修正

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