国際大会で味わった“本物の強度”。「想定以上だった」。U-16日本代表MF野口蓮斗が得た新たな気づきの価値は大きい

骨が軋む音が聞こえそうなほど、すさまじい肉弾戦のバトル。骨太な選手が揃う南米の新興国ベネズエラのプレー強度は、今までに味わった経験がない。

6月21日、U-16インターナショナルドリームカップ2024の第2戦が福島県のJヴィレッジスタジアムで行なわれ、来年秋のU-17ワールドカップをターゲットにしているU-16日本代表はU-16ベネズエラ代表と対戦した。

U-16ウクライナ代表との初戦を6-0で快勝した勢いそのままに、攻撃陣が確実に決定機を活かした。FW浅田大翔(2年/横浜ユース)の2得点で前半のうちに2-0とする。後半はFW葛西夢吹(1年/湘南U-18)とFW吉田湊海(1年/鹿島ユース)にゴールが生まれ、4-0のスコアで連勝を飾った。

育成年代の強化を目的に、2015年に創設された国際大会であるU-16インターナショナルドリームカップ。過去にMF久保建英(レアル・ソシエダ)やDF菅原由勢(AZ)らも出場した経験があり、毎年のように様々な強豪国と戦いながら世界との距離を図ってきた。

4チームの総当たりで行なわれる今大会において、日本は第2戦で南米勢の“強さ”を痛感。4-0で勝利したが、内容は接戦だった。中盤の攻防で競り負け、相手の推進力に屈する場面が散見。ゴール前まで運ばれるシーンは何度もあった。相手の精度不足や審判のジャッジに助けられた側面もあっただけに、この結果を真に受けるべきではないだろう。

ボランチで先発出場したMF野口蓮斗(1年/広島ユース)も身を持って、その強さを味わったひとりだ。

「想定以上だった。南米と対戦するのは初めてだったので」。野口の言葉が全てを物語っており、試合前から廣山望監督に口を酸っぱくして言われていた“本物の強度”に初めて遭遇した。

「南米のチームは球際が全然違う」と振り返ったように、巧さに定評があるプレーメーカーは序盤から苦戦。同じ年代とは思えないほど分厚い筋肉を持つ相手は容赦なく潰しにくる。それをかわそうとしても身体ごと持っていかれ、フィジカル面と推進力で太刀打ちできなかった。

勝利をしたとはいえ、手放しで喜べないのは野口本人も理解している。特に守備面は課題を感じたと話す。

「ボールにアタックして、そこからどうやってボールを奪うのか。(強度を上げるためには)そういうところが重要なので、まずはボールへのアタックが大事」

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ソレッソ熊本U-15時代から将来を嘱望され、昨季は街クラブながら夏のU-15クラブユース選手権で準優勝を経験した野口。自身は大会中の負傷で決勝の舞台に立てなかったが、身体作りを見直して、より高いレベルを目ざした。厳しい環境を求め、今季から広島ユースに加入。親元を離れて寮生活を送り、さらなる成長を期して鍛錬を続けてきた。

「一番は人間的な部分で成長させてもらった」と本人が明かしたように、ピッチ外の部分でも逞しくなり、サッカー面では同じポジションの先輩で高校3年生ながらトップ契約を結んでいるMF中島洋太朗からも多くのことを学んだ。

「なんでもできる。守備もめちゃくちゃ強度が高い。攻撃でも相手を剥がしたり、スルーパスを通したり、強さのなかに巧さがあるので、自分も見習っていかないといけない」

昨夏の悔しさをバネに心身を鍛え、一歩ずつプロサッカー選手になるための道を歩んできた。だが、今大会でまた一味違う経験をし、新たな気づきを得られた価値は大きい。

ポテンシャルは一級品。ゲームの流れを読む“眼”やパスセンスは世代でもトップクラスの力を持つだけに、課題の守備面でレベルアップできれば、また違った景色が見えてくる。

憧れの存在である中島もかつて守備面に課題を抱えていたが、戦う術を身に付けて昨秋のU-17ワールドカップで目覚ましい活躍を見せた。

先輩の背中を追う有望株は近い将来に飛躍を果たせるか――。23日のセネガル戦でもアフリカ勢特有のフィジカル能力に面食らうかもしれないが、未知との遭遇から新たな知見を得て成長の肥やしにするつもりだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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