ボイコットの無念 68歳で晴らす 〝幻の五輪選手〟国際大会で金メダル「好きだから続けてこられた」 パリ代表・杉野正尭の母校、鹿屋体育大体操競技部の礎築いた北川淳一さん

体操の国際大会で金銀のメダルを獲得した北川淳一さん=鹿屋市の鹿屋体育大学

 鹿児島県鹿屋市の鹿屋体育大学名誉教授で、体操競技部の監督を長年務めた北川淳一さん(68)=同市吾平町麓=がマスターズの世界大会に出場し、平行棒で金メダルを獲得した。北川さんは、東西冷戦下で日本がボイコットした1980年モスクワ五輪の代表にも選ばれていた。“幻の五輪選手”が40年超を経て、涙をのんだ世界の舞台で悲願を果たした。

 出場したのはアメリカで2日にあった「MASTERS GYMNASTICS WORLD CUP」。今年で2回目になる大会で、約10カ国が参加した。北川さんは団体総合にも出場し、日本の銀メダルに貢献した。

 東京都出身の北川さんは子どもの頃ぜんそくの持病があり、体力づくりのために9歳から体操を始めた。めきめきと力を付け、順天堂大学大学院生だった25歳の時、モスクワ五輪代表に選ばれた。オリジナル技も用意し、「全てをかける」意気込みで調整していたところ、日本のボイコットが決まった。「出れば日本は絶対メダルを取れていた。それだけにつらかった」と明かす。

 その後海外留学を経て、鹿屋体大の開学と同時に29歳で採用され、体操競技部の監督を65歳の定年退職まで続けた。現在は鹿屋市で子ども向けの体操教室を開く。

 毎日ストレッチやトレーニングを続け、2日の大会に臨んだ。久しぶりの国際大会。「ミスもあり、表彰台には呼ばれないと思っていたからびっくりした。ようやく手にしたメダルで感慨深い」と喜ぶ。

 目標は国際大会での個人総合1位だ。「体操が好きだから、60年間続けてこられた。痛めている左肩と向き合いながら、これからも元気にやっていけたら」とメダルを握りしめた。

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