自治体の努力義務になったけれど…地域公共交通計画 6町村が「作成予定なし」 そもそも「国の補助対象となるバス路線がない」〈南日本新聞・全43市町村地域交通アンケート結果【中編】〉

 2020年の地域交通法改正で、交通体系の将来像を示す地域公共交通計画の作成が自治体の努力義務となった。南日本新聞のアンケートによると、鹿児島県内は積極的に取り組む自治体がある一方、未着手や業務の外部委託も目立ち、温度差が見られた。

 23年度までに作成を済ませたのは回答した43市町村のうち27市町。9市町村は24年度中を想定し、1町が準備に入る。6町村は現時点で予定がないとした。

 計画は持続可能な交通サービス確保への基本方針や計画期間、数値目標、事業内容を記載する。路線バスやコミュニティーバス(コミュバス)に対する国庫補助の要件となっている。

 作成時に特に力を入れた点として、「利便性の向上」「利用促進」「人工知能(AI)活用」「多様な輸送資源の活用」などが挙がった。

 出水市は23年度に作成した。地域の実情に即した課題抽出や施策の方向性をより的確に捉えるため、担当課主体でまとめた。数年内にコミュバス運行の見直しが必要な状況もあった。計画にはコミュバスのような既存手段とAI利用といった新しい手段を組み合わせた将来像を目指す考えを盛り込んだ。

 計画は近隣自治体と連携して作ることも可能で、種子島3市町(西之表、中種子、南種子)と沖永良部2町(和泊、知名)が作成を済ませた。24年度は奄美大島5市町村(奄美、大和、宇検、瀬戸内、龍郷)と徳之島3町(徳之島、天城、伊仙)が共同作成する。

 南大隅町は25年度作成へ向けて準備する。「予定がない」としたのは湧水、錦江、喜界、与論町と三島、十島村。「国の補助対象となるバス路線が地域内になく必要性に乏しい」が主な理由。喜界町は「フェリーとの接続改善を優先するため」と説明する。

 南日本新聞の調べでは、24年度作成分を含め約30市町村が業務を外部に委託する。自治体からは「職員数が限られ、調査分析などのノウハウも十分でない」などと事務負担の大きさを指摘する声も聞かれる。

 九州運輸局鹿児島運輸支局の谷口誠一首席運輸企画専門官は「望ましい交通体系の在り方を地域で考える機会にしてほしい。外部委託であっても地域事情を反映しているかをチェックするなど、自治体の主体的関与が求められる」と指摘した。

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